■強き杏寿郎を育てた母の言葉
続いては、煉獄杏寿郎の人格の礎を作ったともいえる存在、煉獄の母・瑠火のセリフ。上弦の参・猗窩座(あかざ)との戦闘中に、胸に拳を打ち込まれ絶体絶命の煉獄が「鬼になれ」と言ってくる猗窩座との会話中に回想したシーンから紹介したい。
病弱だったという瑠火は自身の死期を悟り、幼い杏寿郎を病床に呼び出し「なぜ自分が人よりも強く生まれたのか分かりますか」と問う。とっさに言いよどむ煉獄に対し、彼女は「弱き人を助けるためです」と言い切った。続けて、凛とした眼差しで「弱き人を助けることは強く生まれたものの責務です 責任を持って果たさなければならない使命なのです」と説いてみせた。
煉獄の心にはこのときの母の言葉がいついかなるときも深く根づいていたのだろう。最後まで母の言いつけを守り、多くの人を守りながら散っていった煉獄の生きざまに涙した人も多かったのではないだろうか。
頭で分かってはいても、いつでも人への思いやりを持って生きていくことはなかなかに難しい。年端も行かない子どもながらその言葉を生涯守り続けた煉獄にも、そんな彼を信頼して生き方を説いた母の瑠火にも、強さと気高さを感じる。