どうも皆さん、私吉本興業で吉本興業的なことをしているパンサーの菅良太郎と申します、以後お見知り置きを。
私39歳男子なのですが、少女漫画が好きでこのふたまん+で少女漫画についてのコラムを書かせていただいている次第でございます。さて今回コラムを書かせていただく作品は、たらちねジョン先生の『海が走るエンドロール』(秋田書店)でございます。
この作品の簡単なあらすじはといいますと、夫と死別し、数十年ぶりに映画館を訪れたうみ子。そこには人生を変える衝撃的な出来事が待っていた。海(カイ)という映像専攻の美大生に出会い、うみ子は気づく。自分は「映画が撮りたい側」の人間なのだと。
というかなりニッチな設定なのですが、これが抜群に面白いし読めば読むほど続きが気になりページをめくる手が止まりません。
■「海」を使った感情の演出
まず主人公のうみ子はなんと65歳! なかなかないですよね、孫までいる初老のヒロインは。でもね、かわいいんですよ、優しくて知的で料理上手で。過去がたくさん描かれているわけではないのですが、彼女が丁寧に生きてきたことが読者に伝わる。
そして現役美大生のカイは、読んでいた私も途中まで女性と勘違いしていた、ショートカットが似合う切長の目が印象的なユニセックス系のイケメンでございます。マジでかっこいいです、けっこういろいろな作品を読む私ですがカイくんは即、菅が選ぶ少女漫画イケメンランキングの上位に入ってまいりました。
この漫画のタイトル、うみ子、カイとこの漫画のテーマが「海」であることは間違いないと思うのですが、演出にもその「海」がふんだんに使われていてそれがまたたまらないんです。
あらすじにあったように、映画が撮りたい側の人間だと気づくとき、既に映画を撮ると決めているカイ側に大きい波が引いていく。私はただの映画好きのおばあちゃんだからと自分自身にブレーキをかけ、その波に引き込まれないようにグッとこらえるが、その波の強さに立ちくらみを起こしてしまい思わずカイ側によろけてしまう。そのよろけてしまったうみ子を支え、カイくんがうみ子のこれからの人生を決定づけるひと言をささやく。
かっこよすぎる。
波の押し引きだけで登場人物の感情と動きとその力強さも表現してさらに読者の感情までもまさに引き込んでしまう。本当に鳥肌がえらいことになってました。むしろちょっと鳥になってたかもです。