戦争を舞台に描かれたアニメ『機動戦士ガンダム』の中には、物語のリアリティを高めるためのさまざまな専門用語が“さりげなく”盛りこまれている。そんな中から今回取り上げたいのは、地球連邦軍が殉職者に対してとった制度について。連邦軍の司令部が、戦死者に贈った辞令に関するエピソードを例に挙げて紹介していこう。
■命を捨てて仲間を守った男
『機動戦士ガンダム』の第21話「激闘は憎しみ深く」の中で、リュウ・ホセイはコア・ファイターで敵機に体当たりを敢行。アムロ・レイたちにとって良き兄貴分だったリュウは味方の窮地を救い、壮絶な戦死を遂げた。
その後、南米・ジャブローにある司令部でホワイトベースの面々は正式に軍の一員となり、階級を与えられることになる。その最後につけ加えるように、戦死したリュウ・ホセイが「二階級特進」し、「曹長」から「中尉」に昇格することも伝えられた。
これを聞いたアムロは怒りをあらわにし、「二階級特進だけで……それだけでおしまいなんですか!」と辞令を読み上げた士官に食ってかかった。
この「特進」とは旧日本軍で行われていた「特別進級」の略で、勲功のあった戦闘や本人の過失によらない任務中の事故などで死亡した兵士の階級を進級させる措置のこと。階級社会の軍隊においては、死亡時の階級によって本人の名誉や叙勲、そして遺族に支払われる恩給や年金の額も変わってくる。
中でも「二階級特進」は、功績の大きい戦死(事故の場合は「殉職」)者に与えられるもので、階級が2つアップ。リュウの場合は、これで「曹長」から「中尉」へと昇格したワケだ。
なお、現在の自衛隊をはじめ、階級制度がある警察、消防、海保といった職業でも殉職者に対して「特進」が慣習的に行われており、公務中の事故(事件)などに適用されている。