『機動戦士ガンダム』に学ぶ軍事用語、セイラの「半舷休息」ブライトの「半舷上陸」の意味とは?の画像
DVD版『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編/特別版』パッケージより引用

「リアルロボット」アニメの先駆けとも言われる『機動戦士ガンダム』。戦争を舞台に描かれた作品だけあってさまざまな兵器や軍事作戦が登場。中には恐ろしい大量破壊兵器なども存在する。

 その劇中では物語のリアリティを高めるため、軍事に関するさまざまな専門用語が「さりげなく」ちりばめられていることをご存知だろうか。そこで本記事では、ガンダムに登場した、あまり一般的ではない軍事用語について解説したいと思う。

 まず紹介するのは『劇場版 機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』の中に登場した用語。ホワイトベースがソロモン要塞の付近に停泊中、艦内に警報音が鳴り響く。このとき入浴中だったセイラが「半舷休息(はんげんきゅうそく)のはずなのに……」とつぶやく場面があった。「休息」はともかく、「半舷」にはどのような意味があるのだろうか?

■作戦行動中の軍人に真の休息はない!?

 このときの状況をざっくりと説明すると、地球連邦軍はソロモン要塞攻略戦に勝利し、つかの間の休息に入る。しかし、ララァのエルメスによるサイコミュ攻撃が行われたことでホワイトベースは警戒態勢に移行。艦長のブライト・ノアは、パイロットにも全機緊急発進の指令を下した。

 通常、作戦行動中の軍用艦は、長期間にわたる勤務であっても常に哨戒を解くことはできない。そこで待機・移動時には、2~3交代制の乗員シフトを組んで艦は運用される。つまり船の半分を意味する「半舷」が「休息」をとることから生まれたのが、この「半舷休息」という用語だ。

 だが、ひとたび戦闘やそれに次ぐ警戒態勢に入れば、艦の戦闘力を最大にするために就寝中の乗組員であっても起床、ただちに全員が持ち場につく必要がある。『ガンダム』の中でも戦闘態勢に入る際にブライトが「総員起こしだ!」と命じる場面があるが、まさにその合図だ。

 こうした背景が分かると、セイラが「半舷休息のはずなのに……」ともらした、なにげないひと言にはいろんな意味がこめられている気もしてくる。単に「休息を取り消された」という不満だけでなく、停泊中も敵を休ませないジオン公国軍の執拗な攻撃に対して心底ウンザリしている様子なども感じとれないだろうか。

  1. 1
  2. 2