■シリアス展開の導入となった衝撃事件

 最後にご紹介したいのは、鳥山明氏の『ドラゴンボール』に登場した衝撃シーン。作中にはさまざまなショッキングなシーンが登場しますが、いきなりシリアス路線に突入する契機となった印象的な場面がありました。

 

※以下の内容には『ドラゴンボール』のコミックス27巻までの内容を含むキャラクターの生死に関するネタバレがあるので未読の方はご注意ください。

 

 それは主人公・孫悟空の親友、クリリンの死亡シーンです。「クリリンの死」といえば、フリーザ戦で悟空が超サイヤ人になるきっかけとなった場面が有名ですが、個人的にそれよりショックだったのが、一番最初にクリリンが死んだときです。

 まだ悟空が少年だった頃に出場した「第22回天下一武道会」。そこでは悟空とクリリンの同門対決があったり、戦いの中で天津飯が改心したりと、すがすがしい雰囲気の中で大会が終わります。決勝を戦った悟空と天津飯たちがお互いの健闘を称え合い、和気あいあいと食事に行く相談をしている中、悟空の忘れ物をクリリンが代わりに控え室まで取りに行くことに……。そのとき悲劇が起こりました。

「ぎゃあ~っ!!」というクリリンの悲鳴を聞き、慌てて悟空たちが駆けつけると、そこには床に横たわったクリリンの姿が。クリリンに近寄った悟空は悲痛な表情で「し…死んでる」「ク…クリリンが……殺された……!!」とつぶやきます。悟空が抱き起こそうとしたクリリンの瞳孔は開き、口から血が流れる無残な姿でした。

 それまで『ドラゴンボール』の作中で死んだキャラがいなかったワケではありませんが、悟空に近い主要キャラの死が鮮烈に描かれたことで、どことなくコメディタッチだった作品が一気にシリアス路線に突入していきます。

 クリリンを殺したのはピッコロ大魔王の手下のタンバリンでしたが、クリリンを殺すシーン自体は描かれておらず。いきなり死んでいるシーンに場面転換したこともクリリンの不可解な死を強調し、読者の恐怖心をあおった要因と言えるのかもしれません。


 今回は比較的古め(『HUNTER×HUNTER』は長期休載の影響もありますが……)の作品からピックアップしましたが、最近だと『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』などもトラウマものの衝撃シーンがたくさんあります。これは「ジャンプ作品」に限りませんが、ドラマチックな物語から人の生や死はなかなか切り離せない要素。それだけ読者の記憶に残る場面が多いということなのかもしれませんね。

  1. 1
  2. 2
  3. 3