■アムロの成長に大きく寄与した一組のカップル
最後に紹介したいのは『機動戦士ガンダム』に登場したマチルダ・アジャンとウッディ・マルデン。『機動戦士ガンダム』は1979年から80年にかけてテレビ放映され、ガンダムシリーズの原点となる作品だ。
マチルダとウッディの二人は作中で結婚はしていないが、結婚式を目前に控えた状況でエピソードがつづられている。婚約していた二人は、地球連邦軍の軍人としてそれぞれ任務に就いていた。
修理と補給の特命を受けたマチルダは、不時着して孤立したホワイトベースに到着。しかし、修理の終わっていないホワイトベースを「黒い三連星」と呼ばれる3機のドムが急襲する。1対3の戦いを強いられたアムロのガンダムを援護するため、マチルダは輸送機ミデアで出撃。だがドムに捕らえられ、コクピットを叩きつぶされてマチルダは戦死した。
一方、マチルダの婚約者だったウッディは、地球連邦軍の基地ジャブローに所属する技術士官。ホワイトベースが寄港した際の修理責任者だった。
自分の腕の未熟さがマチルダの死を招いたと謝罪するアムロに対し、ウッディは「うぬぼれるんじゃない」と叱咤。さらにガンダム1機の働きでマチルダを助けられたり、戦争に勝てるような甘いものではないと諭す。このウッディの言葉は、必要以上に責任を感じるアムロに対する助言であり、大人として若いパイロットを思いやる気持ちも含まれていたのかもしれない。
その後、ジャブローの基地内にジオン軍の侵入を許すと、ウッディは戦闘用ホバークラフト「ファンファン」で出撃。だがウッディの機体は、シャア・アズナブルの搭乗するズゴックにコクピットを潰され、皮肉にもマチルダと同じ最期を遂げた。
ともに生きていれば、ジャブローで結婚式が行われるはずだったマチルダとウッディ。生前ウッディが想像した結婚式の情景には、アムロを始めとするホワイトベースのクルーたちも式に参加しており、その幸せそうな結婚式のイメージと悲しすぎる現実の対比に涙した視聴者も多いことだろう。
ガンダムシリーズは戦争をテーマにした作品である以上、“破壊”や“死”といったネガティブな要素からは避けられない。そんな物語だからこそ、作品において“結婚”のような人生の幸せな一大イベントが大きな意味を持ってくるのかもしれない。