■「質量を持った残像」の正体とは?

 最後に紹介したいのは『機動戦士ガンダム F91』に登場した、新技術というより“ある奇妙な現象”についてです。シーブック・アノーの乗るガンダムF91と、“鉄仮面”ことカロッゾ・ロナの乗るラフレシアの戦いの中で、F91は信じられない高速機動を見せます。

 まるで分身したかのような素早い挙動を見せるF91に対し、鉄仮面は「何機いるのだ、敵は」と誤認。それでもラフレシアのテンタクラーロッドの1本がF91を捉えたかに見えましたがそれは実物ではなく、カロッゾは「質量を持った残像だと言うのか……」と衝撃を受けるシーンがありました。

 このとき「質量を持った残像ってどういうこと?」と感じた人もいることでしょう。これはF91を開発したサナリィの新技術……というワケではなく、実は機体の冷却システムが生み出した副産物のようなモノでした。

 リミッターを解除したF91が最大稼働モードに入ると、機体は高熱を発します。その冷却のために、F91の装甲に施された塗料や金属粒子を剥離させる「M.E.P.E.(MEtal Peelーoff Effect)」、つまり金属剥離効果が発生。この剥離した金属片は多少の質量を持っていることから、パイロットやセンサーが別機体と誤認し、カロッゾの言う「質量を持った残像」という表現に至ったのです。

 今回は宇宙世紀の主要『ガンダム』作品に登場した、個人的に気になった3つの技術(&現象)についてご紹介いたしました。アニメの作中で描かれていない設定部分については、主に『総解説ガンダム事典』(講談社)の情報を参考にさせていただきました。

『ガンダム』シリーズの設定は月日がたつうちに若干変化もあり、中には後づけで作られたモノもあるかと思います。どんな事象も単に「説明不要の超常現象」だけで済まさず、我々に考察と妄想の余地を残してくれる点も作品の奥深さを生み出している一因ではないでしょうか。

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