■雲のジュウザの人間的魅力
『北斗の拳』の物語において、そこまで出番の多かったキャラクターではない雲のジュウザ。その男に、なぜこれほど心がひかれるのだろうか。
●雲のように生きた男
ジュウザの最大の魅力として挙げたいのが、「何事にも縛られずに自由に生きる」という確固たる意志だ。「俺はあの雲のように自由気ままに生きるのよ」「おれは雲! おれはおれの意志で動く」「雲ゆえの気まぐれよ」など、ジュウザ自身が己の生き様を“雲”にたとえたセリフの数々が忘れられない。
そして命を失ってまでその姿勢を貫き通したジュウザのことをあのラオウですら認め、一度は背にまたがることを許した黒王がジュウザの遺体に土をかけ、丁重に葬る場面は印象深い。
●我流なのに圧倒的な強さ
『北斗の拳』がバトル漫画である以上、やはり強さも見逃せないポイントである。ジュウザはその実力をラオウが認めたほどの天才。我流の拳法を用いて、北斗神拳の使い手と相まみえた紛れもない逸材である。
ジュウザが世捨て人のような生活を送らずに、ひたすら武を磨き続けていたとしたら、はたしてどれほどの戦士に成長を遂げていたのだろうか……。
●愛した女性のために命を捨てる
自由に生きる道を選んだジュウザが、ラオウと戦うことを決意した背景にはユリアの存在があった。雲のように自由に生きることをまっとうしていた男を“唯一”動かしたのが、「かつて愛した女性」というところにジュウザの人間的な魅力を感じざるをえない。
そしてその女性を守るために最期まで意地を貫き、けして屈することなく散っていったジュウザ。その尊い男の生き様に尊敬の念をいだき、憧れたのはおそらく私だけではないだろう。
我々も生活の中で、さまざまな事情から本意ではない選択を強いられることがある。そんなとき、いつも私は子どもの頃から憧れる雲のジュウザのことを思い出してしまう。
ジュウザのように……雲のように気ままに生きることを押し通すのは現代社会ではなかなか難しいことかもしれない。だが、それでも絶対に譲れないモノを持ち続ける大切さを、雲のジュウザに教えられた気がする。