国民的RPG『ドラゴンクエスト』シリーズの音楽を手がける音楽家、すぎやまこういち氏が4月11日で90歳を迎えた。シリーズ第1作『ドラゴンクエスト』がファミコン用ソフトとして発売された1986年、当時の小学生たちの間で、すぎやまこういちという音楽家の名前を知っている子どもはほとんどいなかったに違いない。ただ、その評価はドラクエのカセットを本体に刺し、電源を入れた瞬間に一変したはず。
■ファミコンからオーケストラが流れた!?
ファミリーコンピューターに積まれている音源は、PSG音源と言って最大で3つまでしか同時に音を出すことができない。ノイズパートを入れれば正確には4つだが、音色もチープな機械音だ。
音程のある音色を3つまでしか使えないとなると、1つはメインメロディ、1つは低音を支えるベース、自由に動ける音はたった残り1つということになる。多くのゲームはここに敵を撃破する音やジャンプする音が加わるので、敵をたくさん撃破している間、音楽からベース音が消え細い音になる。ファミコンを遊んだことがある世代の人なら誰でも一度は経験していることと思う。
そんなこともあり、その時代のゲーム音楽はあくまで2~3の音数を前提に、ゲームのBGMのために作られた、アレンジされたもの。という印象だった。のちのち豪華にアレンジされたサウンドトラックが出たりもすることもあったが、あくまで始まりはゲーム音楽で、それに多重アレンジを加えたという順序である。
だが、すぎやま氏がドラゴンクエストに載せた音楽は、初めて聞いたときから、まず壮大なオーケストラ演奏ありきでそれをPSG音源に落とし込んだもの、という順序を感じた。