■名物師匠の多いボクシング漫画から1位に輝いたのは
そして第1位となったのは、小山ゆう氏のボクシング漫画の傑作『がんばれ元気』から三島栄司。
『あしたのジョー』で死を描くまでにエスカレートしたスポーツ漫画が、ふたたび明るく元気な主人公が描かれるようになった流れのひとつがこの「がんばれ元気」というボクシング漫画。
明るい主人公ではあるんですが、貧困や、唯一の身内であるプロボクサーの父親の死など、「小山ゆう節」が効きまくっていて体内の水分の半分を失うぐらい涙します……!! 身内の死を乗り越えて決意を固める、という部分はその後の『タッチ』や『メジャー』などにも踏襲されていて、その功績も大きい。三島栄司を紹介するにはストーリーも説明したいので、以下にはネタバレがありますのでご理解ください。
幼い頃にプロボクサーの父から手ほどきを受けて以来、我流で練習を積んでいた主人公の堀口元気。そんな元気が初めて本格的にコーチを受けるのが、三島栄司という男だったのです。元気がボクシングをやっていると知った担任の芦川先生が田舎のジムにいる元ボクサーの三島栄司を紹介します。
三島栄司は、この芦川先生の恋人でした。ある試合で敗北したことで、ボクシングを捨ててヤクザの用心棒にまで身を落とし、傷害致死、前科二犯。そんな自分では芦川先生を幸せにできないと彼女のもとから消えるために、ある日ジムに来たチンピラたちを全員叩きのめしてしまう。三島は傷害致死で刑務所に留置されますが、チンピラを打ちのめす三島の見事なテクニックを見て、元気は彼にボクシングを教えてもらいたいと願うようになります。
三島が帰ってきたのは元気が15歳の春。三島が帰るまで1日も欠かさずトレーニングを積んで自信をつけていた元気ですが、その自信は三島とのスパーリングで打ちのめされます。ですが元気はうれしかったのです、我流ではなく、本当のボクシングに初めて触れられたから。(もう泣きそうなんですが続けます)
しかし三島が病気で血を吐いてるところを知ってしまいます。三島は自分が病気であることを芦川先生に言わないように釘を刺します。三島の病は日ごとに悪化しますが、最後の命を元気に懸けることを誓い、連日の激しい練習を続けます。
病状が悪化して一度入院をして退院するものの、治ったわけではありませんでした。
回復したと勘違いした元気は大喜びで三島に会いに行きます。自分とのスパーリングを命じた三島は引退して初めてトランクスをはいてリングに上がります。高度なスピードとテクニックで元気を圧倒する三島ですが、左を打つところに元気の右のクロスで三島はダウン。立ち上がった三島はスローなパンチで元気に殴りかかり、元気は呆然としてパンチを受けます。
おおきく手を広げた三島は元気の上達に喜び涙を流し、こう言います。
「強くなったな堀口」
三島は元気を抱きしめると、倒れ、そのまま救急車で運ばれていった。もはや苦しんでるだけで、意識は不明でした。もう命の尽きる寸前の、最後のスパーリングだったのです……。
泣ける!泣けすぎる……!! この死に様はラオウにも匹敵する!!
三島栄司の「自分の命をかけて主人公を育てる」という想いは漫画界随一でしょう。
本編はここに恋人の芦川先生、チャンピオンの関拳児という要素が入ってくるので、とてつもなく泣けます。昔の漫画なので読んだことがない人は、ぜひとも読んでほしい作品です!
他にも『NARUTO』の自来也、『幽☆遊☆白書』の玄海、『はじめの一歩』の鴨川会長、『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』の比古清十郎、『スラムダンク』の安西先生、『あしたのジョー』の丹下段平と、なかなか選ぶ人物の多い悩ましいテーマでございました。あなたの推し師匠がいればぜひ教えてください。