今年2月に発売35周年を迎えた『ゼルダの伝説』。アイテムとプレイヤーの知恵をフル活用して解く謎解きや、飽きの来ないステージ構成、当時のコンピューターゲームのレベルからは考えられない自由さが盛り込まれ、まさに「本物の冒険」を体感させてくれた同作。『ゼルダの伝説』(以下、ゼル伝)をプレイしていた子どもたちは、己の五感を総動員して壮大かつ不思議な冒険に臨んでいた。
それは、コンピューターゲームがひとつの物語を伝える媒体として市民権を確立した瞬間でもあった。
■道具を使って進化した人類
人間は、道具を使いこなすことで進化した動物である。ナイフを使って枝を削り、杭を作る。それを建材にして家を建て、部屋の中でまた新しい道具を作る。当たり前のことではあるが、「道具を使う」行為が進化の足掛かりになり、人間は遂に文明を築き上げたのだ。
この道具はどの場面でどのように使うべきか。ゼル伝は、ヒトが数百万年にわたって繰り返してきた知的行為を再現した。それは同時に、ゲーム開発者とプレイヤーとの知恵比べでもあった。
1986年2月21日にディスクシステムのローンチタイトルとして発売されたゼル伝。ディスクシステムはお世辞にも広く普及したハードとは言えなかったが、ディスクシステムの子どもであるはずのゼル伝は、親すらも踏み越えてしまうほどの大革命をもたらした。複数人で挑戦するアクションRPGの確立、という革命である。