■ヤンとキャゼルヌのかけあいに夢中!

 とくにキャゼルヌの登場シーンで好きだったのが、ヤンを自宅の食事等に招く場面だ。家族ぐるみのつきあいをする先輩、後輩の関係というよりは、気心の知れた古くからの友人同士といった雰囲気。キートン氏とヤンを演じた故・富山敬氏が語り合うシーンは、声を聞いているだけで心地良かった。

 また2人の娘の良きパパでもあるキャゼルヌは、妻・オルタンスに頭が上がらない一面も。ふだんから皮肉屋で知られるキャゼルヌだが、妻とのやりとりにおいてはつねに劣勢に立たされ、そんなときに「父さんはな、負けたんじゃないぞ。ここで引き下がって女房の顔を立てるのが家庭の平和を保つ秘訣なんだ」と、小さな娘を相手に負け惜しみをつぶやく演技も印象深い。

『銀河英雄伝説』は、アニメより先に田中芳樹氏の原作小説を読んだ人も多いことだろう。私もその1人だが、不思議と石黒版アニメの配役にはほとんど違和感を覚えた記憶がない。出演声優の豪華さが話題になったアニメ作品でもあるが、ヤンの身近なキーパーソンにキートン山田氏を据えたのも“キャスティングの妙”と言えるかもしれない。

 そして50年以上もさまざまなアニメ作品で私たちを楽しませてくれたキートン山田氏のご活躍に感謝しつつ、3月28日放送の『ちびまる子ちゃん』での最後のナレーションをしっかり見届けたいと思う。

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