■しいはしが急遽開いたGロッソツアーでのサービス精神
ここで蔦宗ハッピーセットの威力のすごさを物語るエピソードをおひとつ。僕が御茶ノ水男子というコンビを組んで活動していた頃、劇場が神保町で水道橋から近かったんです。なのでよく劇場出番前、間、後でシアターGロッソを見てから自分の出番に行っていました。出番→観劇→出番のヒーローショーサンドイッチのときは、2回目の漫才登場が心なしかGロッソの“握手レッド”の登場っぽくなっていた気がします。(分かる人にしか分かりません、ごめんなさい)
ライブの中でシアターGロッソ(当時はトッキュウジャーショー)について話す機会があり、熱弁してあげくの果て「このライブ終わったらGロッソ行くから、興味あるyouは来ちゃいなよ」とあのJさんとは別のJさんこと、ジャスタウェイさんが急遽Gロッソツアーを開催したんです。
集まったのが20人ほど。最後列に明らかに毛色が違う20人近くの若者たちがゾロリと並びショーを観劇。皆さん生で繰り広げるアクションやスタントひとつひとつに驚き感動。そして最後にトッキュウジャーが客席まで来てくれるんですが、トッキュウ1号が最後列の28列目まで来てくれたんです。そう、このレッドこそが蔦宗さん。レッドのキャラも相まってハイタッチや手を振ったりとサービス満点。ふと見たら戦隊すら知らなかった子たちが目をキラキラさせてトリコに。場の空気を変える力は本当にお見事で「ん"~」とうなっていたら自分がハイタッチするのを忘れ、慌ててせがむという気持ち悪い一面を当時のファンの皆様にお見せする事故も起きましたが、みんな蔦宗ハッピーセットでお腹いっぱいになり笑顔でJさんツアーは終了。
ご本人から聞いたお話ですが、とにかくミッキーをリスペクトしていて、自分がスーツを着て演じるようになってから、ミッキーのすごさをしみじみと感じたそうです。ミッキーと触れ合ったときに「あ、される側はこんな気持ちなんだ。こうされるとうれしいんだ、楽しいんだ」と感じ、それを自分の中で落とし込んでキャラクターに反映させていたそうです。それがまさにトッキュウ1号の時期。ちゃんと蔦ミッキーしてました。瞬時に相手が求めてるものを判断しそのキャラで提供する力が長けているのは、やはり生の舞台経験が豊富な蔦宗さんだからこそなのかなと思います。
蔦宗さんはシアターGロッソという劇場でヒーローを演じるという筋肉を着々とつけていき、さぁ次のステージはテレビのヒーローだ!というわけではなかったんですね。
ヒーローショーの合間でテレビのほうでも演じる機会があるのですが、そのときに自分の中で納得いくものが出来ず悩んだそうです。そこで本格的にテレビのほうでまた一からやろうと決意し、Gロッソと平行してテレビの現場もやり、遂にGロッソを卒業。そして本格的にテレビへシフト。怪人や敵幹部を演じ、怪人の素晴らしさや楽しさを学び2019年遂に『騎士竜戦隊リュウソウジャー』でリュウソウグリーンでテレビ初のレギュラーメンバーに抜擢されます。
数年前に蔦宗さんからいろいろとお話を聞き「いつかテレビでヒーローをやりたい」とおっしゃっていたのが印象的でしたので、リュウソウグリーンが決まったときはこっちまでうれしくなりました。
翌年のキラメイイエロー、そして最新作『機界戦隊ゼンカイジャー』ではゼンカイガオーンを担当。ゼンカイジャーは人間1人+ロボ4体という構成なので、制作記者会見や映画の舞台あいさつも変身前の役者さんと変身前のロボットが登壇します。スーパー戦隊を知らない人からしたらパニックですよね(笑)。
このロボは変身前と変身後はスーツアクターさんが演じています。実際に舞台あいさつを拝見させていただいたのですが、やはり長年の舞台経験があるので、どの角度でも自分がどう見られているのか? というのが分かってるなと感じましたし、こっちも気持ち悪いくらい細かく見るんですけど、所作ひとつ取っても細かいところでしっかり演じていて完璧。現実を言ってしまえば着ぐるみなんですけど、そのキャラクターが本当に“そこにいる感”がすごくて、まさにミッキーだなと。ミッキーに会ったときって大人でも「どうせ人が入ってるんでしょ」より「うわ、ミッキーだ!」が勝るじゃないですか。あれと同じです。
僕はいつかテレビで蔦宗さんのレッドが見たいです。Gロッソでレッドの姿を見続けていたので、テレビでレッドを演じるときが来たらおじさん泣いちゃうと思う。