■SNSでは「エヴァの呪いから解放された」の声

 実際、SNSでも「エヴァの呪いから解放された」という意見が目立った。「エヴァの呪縛」とは、『Q』でアスカの発した、自身の外見が14年前と変わっていない理由をシンジに説明するときに出てきた言葉だ。『エヴァ』ファンはまさしく、シンジたちのような子どもから、『シン・エヴァ』まで見届けたこと、そしてあの結末に納得できるようになったことで、ようやく大人になれたのではないだろうか。

 さっそく映画を観た知人たちに話を聞いた。「十数年エヴァを追っていたが、これまでとはまったく違ったカヲル君の解釈に出会って驚いた。他のキャラも、それぞれの過去(の展開)からは想像できなかった未来があり、これまでのエヴァとは違う新しい世界になったのだと思った」(20代・女性)、「97年の映画『Air/まごころを、君に』からは“現実を見ろ”というメッセージを感じた。今回の『シン・エヴァ』はファンを突き放さないかたちで、実感を伴って成長に向かわせてくれる結末だったように感じる」(30代・男性)、「『シン・エヴァ』を観て、まるで庵野監督本人の人生を見ているようだと思った」(40代・男性)、「庵野さんとスタジオカラーのみなさんの物作りの姿勢にただただ圧倒されました。初日に見ましたがまだボーっとしてしまいます」(40代・男性)、「前回の展開からどう風呂敷を畳むのかと心配していたのですが、いい意味で驚きました。全てに納得ができました」(30代女性)というコメントが返ってきた。

『エヴァ』歴やハマり具合はそれぞれ違うものの、少なくともテレビアニメシリーズからずっと見てきたファンたちは、彼らなりのカタルシスを得たようだ。

 そう考えれば、『エヴァ』が青春でもブームでもなく、「人生」そのものだった人がいかに多いことか。思えば2012年11月に『Q』が公開されてから8年以上が経過した。筆者自身も、当時一緒に劇場に足を運んだ友人とはもう交流もなく、居住地も仕事も変わった。しかしそれで良い。きっと『Q』の翌年に『シン・エヴァ』が公開されていたら、これほどのカタルシスは得られなかったように思う。あの結末は、多くの年月や経験を積み重ねたからこそ、そして日常生活を送る上で多くの変化に揉まれた今の自分だからこそ受け入れられたものなのだ。『シン・エヴァ』は、“碇シンジ”だった我々が大人になるための通過儀礼だった。

 メインビジュアルが発表されたとき、ど真ん中に書かれた「さらば、全てのエヴァンゲリオン。」の文字に実感が伴わなかった。しかし今なら、少しの寂しさはありながらも、すがすがしく『エヴァ』にさよならできるような気がする。

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