コーエーテクモゲームスは今年5月20日に、海洋冒険シミュレーションゲーム『大航海時代IV with パワーアップキットHD version』をNintendo SwitchとSteam向けに発売する。
大航海時代シリーズはコーエーを代表するタイトルだが、特に『大航海時代IV』は初リリースから20年以上が経過した今でも新ハードに移植され続けている。いや、ただの移植であれば特筆すべきものではないが、このゲームの場合はHDリマスターや追加要素が施されている。
美しく繊細なイラストで描かれたキャラが印象的な『大航海時代IV』、実はそれ以上に30代以上のオッサンキャラの存在が際立っている。主人公としてプレイできるキャラはいずれも美男美女なのだが、彼らの引き立て役であるはずの中年男がどういうわけか冴えている。
ある者は胸の内にある愛国心を燃やし、またある者は悪の道に走りながらも生き別れの家族を想い続ける。『大航海時代IV』は哀愁漂う脇役のオッサンが大活躍するゲームなのだ!
■一見すると欠点だらけだが……
このゲームの舞台は、16世紀終わり頃の世界。具体的に西暦年が示されるわけではないが、スペインとポルトガルによる海洋開拓が一段落した頃合いである。だから、中南米や東南アジアにヨーロッパ勢力が進出している。
初心者向けキャラのラファエル・カストールでプレイを進めると、やがてペレイラ商会という勢力と突き当たる。この商会の親方はラファエルと同じポルトガル人のドゥアルテ・ロペス・デ・ペレイラというオッサン(32歳)。ソップ型の三役力士のような見た目の男である。
マレー半島マラッカを本拠地にしているペレイラは「世の中カネで動いてる」と言い切る男で、己の利益を脅かす者は絶対に許さない。言葉遣いはべらんめぇ調、典型的な貿易商人気質だ。粗野で気難しく、怒らせると怖い。ところが、そんな人として欠点だらけに思えるペレイラがカッコイイ!
ラファエルでプレイしていくと、旅の途中でポルトガルがスペインに併合されてしまう強制イベントが訪れる。これは史実でもあったことで、同君連合という建前だが実際はスペイン・ハプスブルク家がポルトガルを丸ごと呑み込んでしまったのだ。ラファエルはそれに憤慨し、スペインを叩き潰すことを決意する。
が、そこへペレイラがやって来てラファエルを諭す。そして、なぜ自分が東南アジアに根を張って商売しているかを明かすのだ。
東南アジアにはもう1人、オランダ人のアントニー・フォン・クーンという男がいる。巧妙かつ残忍なやり口で現地住民から搾取し、香辛料を独占しようとする商人だ。同時に、クーンが香辛料の産地を握っている以上はそれを牽制する役目の者がどうしても必要で、だからこそペレイラがその役目を担っている。
ふだんはカネのことしか頭にないようなペレイラだが、その胸の中では熱い愛国心がたぎっている。ただし、いや、それゆえに「俺は愛国者」だの「大義がどうのこうの」だのは口が裂けても言わない。そんなことをいちいち公言するほど、ペレイラは承認欲求に飢えた男ではないのだ。
素晴らしいオッサンじゃないか! 祖国から遠く離れた地で働いているからこそ、「祖国にとって最も利益になる行為」というものを骨の髄まで理解しているのだ。