「WEB声優MEN」でも、悠木碧インタビュー&朴璐美×黒川智之監督対談を掲載している、映画『ぼくらのよあけ』が絶賛公開中だ。舞台は2049年の阿佐ヶ谷団地。宇宙好きの少年・悠真が、遠い星からやってきた無人探査機の人工知能と出会い、仲間たちと共に極秘ミッションに挑む物語だ。
本作の監督を務めた黒川智之が10月25日、第35回東京国際映画祭にて開催された『アニメーションで世界を創る』ジャパニーズ・アニメーション アニメ・シンポジウムに参加。映画『雨を告げる漂流団地』監督の石田祐康、映画『夏へのトンネル、さよならの出口』監督の田口智久と、お互いの作品の共通点やアニメーションの魅力について語り合った。
※ ※ ※
「団地をテーマにした作品が同時期に公開されると知ってビックリ」(石田監督)
映画『ぼくらのよあけ』 TIFFアニメ・シンポジウム黒川監督登壇 概要
◆実施日時:10月25日(火)
◆会場:東京ミッドタウン日比谷 BASE Q
◆登壇者:石田祐康(『雨を告げる漂流団地』監督)、田口智久(『夏へのトンネル、さよならの出口』監督)、黒川智之(『ぼくらのよあけ』監督)、藤津亮太(モデレーター、アニメ評論家)
https://youtu.be/PNWNGe-LOlU
奇しくも『ぼくらのよあけ』と『雨を告げる漂流団地』は“団地”を舞台にしている。これに石田監督は「同じ団地をテーマにした作品が同じ時期に公開されると知ったときはドヒャー!となってビックリしました。団地が舞台の作品が同時進行していることは露知らず、お互いにビックリした感覚です。でもそれはそれで面白い。同じ団地の友人として2作品とも楽しんでほしいです」と相乗効果での話題性に期待。
一方の黒川監督も「僕も『雨を告げる漂流団地』についてはNetflixの発表会で知ったほどで、まさに寝耳に水でした。ただすでにこちらの作品も動いていて、どうこうできるわけでもないので、良くも悪くもそれぞれの作品ということであまり気にしませんでした。こういう珍しい機会もそうないので、一つの話題性として面白いと思いました」と偶然の一致を楽しんでいた。
3作品に共通するアイテムとして“水”も挙げられる。田口監督は「登場人物たちが対になっている、お互いが写し鏡のような存在だということを様々なシーンで表現しているのですが、メインの舞台であるトンネルの中でも鏡の演出をしたいと思った。ただ、地面を鏡張りにすることはできないので、水を鏡面として捉えるアイデアを採用しました」と狙いを解説。
黒川監督は作中登場する水の惑星・“虹の根”を表現するにあたり「水はアニメの作画的にカロリーが高い表現になる。でも原作を読んだときからそこは避けて通れないと覚悟を決めていたので、水を描くエフェクトの作画監督を専任で置きました」とこだわりを紹介。石田監督は「黒川監督の話には共感しかありません」と笑いつつ「水をアニメで表現するのはとにかく大変ですが、『雨を告げる漂流団地』は画面の9割が水なので避けられないことでした。しかし本作の水の表現は『ぼくらのよあけ』とは違って、演技をする水ではなく大海原という背景や環境としての水が多かったので、CGで繰り返し使えるようなものを作って使用しました」と明かした。
「アニメの最大のメリットは、すべてをコントロールできること」(田口監督)
またアニメ作品のアニメならではの魅力についても言及。石田監督は「描き手が何に価値を置いてどう感じているのかがそのまま表れるのが面白いところ」といい、田口監督は「アニメの最大のメリットは、実写とは違いすべてをコントロールできること。最初はイメージと離れていても、作画によって次第にイメージに近いものが生まれてくる」とその魅力を解説した。
学生時代は、実写映画の勉強をしていたという黒川監督は「アニメはすべてをコントロールできるけれど、実写にあるような偶然性は生まれないので狙わないといけない。そこに大きな違いがあると思う。真っ白なコンテに自分のイメージを落とし込んでいくのが面白さであり難しさであり苦しいところ。それがアニメーションの醍醐味だと思います」と実感を込めると、石田監督・田口監督ともに大きく頷く場面も。石田監督は「コンテを描く過程で白い紙がひたすら続いていると、これ本当に終わるのかな?と思うことがある。0から1を生み出す怖さがありますね」とも共感していた。
現在公開中の『ぼくらのよあけ』について黒川監督は「全編に渡って自分のイメージを超えてきた作品です。完成したフィルムは自分が思った以上に主人公の悠真が生き生きしている。ビジュアルも凄く綺麗にまとまったと思う。音楽も声もお芝居も皆さんのご協力を経て素晴らしい作品になった」と手応えを口にして「今日はお二人のお話を伺うことができて貴重な体験となりました。『ぼくらのよあけ』は現在公開中なので、皆さんも劇場に足を運んでください」とアピールしていた。
また、黒川監督は24日に行われたレッドカーペットにも悠木碧が演じたオートボット・ナナコのぬいぐるみと共に登場した。
【関連記事】岡本信彦/島﨑信長、直田姫奈/悠木碧で『キミスイ』朗読劇化!豪華声優陣が「声優としての技術や経験、感性を総動員」し、新たな『君の膵臓をたべたい』を紡ぎ出す
<作品情報>
映画『ぼくらのよあけ』
2022年10月21日(金)より全国公開中
【STORY】
1万2000年をかけて地球に来た“未知なる存在” と子どもたちの極秘ミッションが今、始まる―
「頼みがある。私が宇宙に帰るのを手伝ってもらえないだろうか?」
西暦2049年、夏。
阿佐ヶ谷団地に住んでいる小学4年生の沢渡悠真は、間もなく地球に大接近するという“SHⅢ・アールヴィル彗星”に夢中になっていた。
そんな時、沢渡家の人工知能搭載型家庭用オートボット・ナナコが未知の存在にハッキングされた。
「二月の黎明号」と名乗る宇宙から来たその存在は、2022年に地球に降下した際、大気圏突入時のトラブルで故障、悠真たちが住む団地の1棟に擬態して休眠していたという。
その夏、子どもたちの極秘ミッションが始まった―
【CAST】
杉咲 花(沢渡悠真役)、悠木 碧(ナナコ役)、藤原夏海(岸 真悟役)、岡本信彦(田所銀之介役)、水瀬いのり(河合花香役)、戸松 遥(岸 わこ役)、花澤香菜(沢渡はるか役)、細谷佳正(沢渡 遼役)、津田健次郎(河合義達役)、朴 璐美(二月の黎明号役)、横澤夏子(岸みふゆ役)、ほか
【主題歌】
三浦大知「いつしか」
【STAFF】
原作:今井哲也「ぼくらのよあけ」(講談社「月刊アフタヌーン」刊)
監督:黒川智之
脚本:佐藤 大
アニメーションキャラクター原案・コンセプトデザイン:pomodorosa
アニメーションキャラクターデザイン・総作画監督:吉田隆彦
虹の根デザイン:みっちぇ
音楽:横山 克
アニメーション制作:ゼロジー
配給:ギャガ/エイベックス・ピクチャーズ
製作:2022「ぼくらのよあけ」製作委員会
【公式HP】http://bokuranoyoake.com/
【公式Twitter】@bokura_no_yoake
©今井哲也・講談社/2022「ぼくらのよあけ」製作委員会