コナン高山みなみ、山口勝平がたった一言の出演!?「ギャグの間合いは命であり、勝負どころ」/「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」大地丙太郎監督(インタビュー後編)の画像
『名探偵コナン 犯人の犯沢さん』ティザービジュアル

昨年、コミックス100巻が発売された国民的マンガ「名探偵コナン」。100巻プロジェクトが始動し、公式スピンオフ作品2作品のアニメ化が発表され、今春には「名探偵コナン ゼロの日常(ティータイム)」が放送。そして本日10月4日(火)より、「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」がNetflixで国内配信スタート!
江戸川コナンたちが住む米花町は、犯罪発生率トップクラスの町。そこへ、ある復讐心を抱く犯人の犯沢さん(仮名)が舞い降りる。その犯沢さんが、日々復讐することを考えながらも、初めてのルームシェアやアルバイトに大奮闘! 犯沢さんの意外な日常に迫るクリミナルギャグの連続の本作を手掛ける大地丙太郎監督インタビューの第二弾の後編は、『名探偵コナン』の主要キャラクターを演じる高山みなみ、山口勝平のエピソードから、自身のギャグ作品作りのこだわりをたっぷり聞いた。

インタビュー前編はこちら

 

※ ※ ※

 

リズム感のある声優こそが、上手い声優の条件

 

ポスタービジュアル

――本作のポスタービジュアルが、かなりインパクトがありますよね。本家である『名探偵コナン』の江戸川コナンをはじめ、人気キャラクターが配置されていますが、いったいどんな作品なのか興味がそそられてしまいます。

 

僕も気になります。なぜ、蘭ちゃんと阿笠博士がこんなに大きくなっているんでしょうね(笑)。犯沢さんのポーズも不思議ですし(笑)。ポスタービジュアルは、僕は直接ディレクションしていないのですが、作品のシュールな世界観を表していると思いますね。

 

――前回のお話では、コンテ作りと犯沢さん役の蒼井翔太さんについてお伺いしました。5分半という短い尺の中で、犯沢さんが、本家のキャラクターと一瞬だけ交わるところも本作楽しみの一つです。

 

本家のキャストは、わずかな出演シーンなのですが、本家以外にも豪華な声優さんに出ていただいています。キャストの方たちはVコンテという独特のスタイルをおもしろがってくれましたね。僕は、自分でVコンテを作るとき、「ガシャーン」とか「ダダダダダ」というSE音も自分の声でやってるんです。それもすべて間合いなので。それで、Vコンテを観た茂木遥史役の堀内賢雄さんが「このSE、僕が言ってもいい?」と言ってくれたんですよ。そこが使われているかどうか、ぜひ放送を楽しみにしてほしいです。

 

――コナン役の高山みなみさんはいかがでしたか。

 

もしかしたら高山さんに「つまらない」とか言われるかなと思ったけど、怒られなくてよかったです(笑)。蒼井くんと高山さんは、最初の収録を一緒に行いましたが、とてもスムーズに進んで違和感がなかったです。

 

――前回のお話では、監督が絵コンテとVコンテを全12話ぶん、ご自身で作られたという話がありましたが、1話ぶんのVコンテを作るのにどのくらいの時間がかかるものなのでしょうか?

 

疲れを考えなければ、丸一日あればできます。ですが、けっこう疲れるんですよ(笑)。紙コンテが上がって、全部のキャラクターのセリフをひとつずつ収録して、その後にセリフの編集をして。どのくらいの尺がはみ出ているかが見えてくると、ここでようやく整えはじめられるんです。この3段階は、一度にやるのはけっこうしんどいです。セリフを収録したら、しばらく休んだり別の仕事をしたりして、また新たな気持ちにして編集作業に入るので、やっぱり3日くらいはかかっていますね。

 

――すごく時間がかかるものなのですね。お一人での作業なのですか?

 

そうです。恥ずかしいから、誰にも相談しないで一人でやっています(笑)。孤独な作業なんです。

 

――制作の中でこのコンテ作業がいちばん神経を使いそうですね。

 

そうかもしれません。ただ、これに従って皆さんにアニメーションを作ってもらったりアフレコをしてもらえれば、あとは微調整で済むんです。だから、アニメ作りの8割は、このVコンテ作業が肝心なんですよ。

 

――監督がギャグアニメの制作でこだわっているのは、やはり間合いだと。

 

あらゆるアニメーション作品のジャンルの中で、ギャグ作品っていちばん作るのが難しいと思います。ギャグは間合いが命であり勝負ですから、セリフの掛け合いの間は、1フレ、2フレ(※)レベルでこだわっています。ツッコミが2フレ遅れたらもう笑えないんです。
※……フレームのこと。1フレームは約0.06秒

 

――なるほど。テンポも大切なんですね。

 

ゆっくりのテンポでも笑えるときは笑えるので、決して早ければいいというわけではないですけどね。僕は、テンポのことをリズムと言っているのですが、僕は、会話の間合いやリズムを音楽にたとえて、緩急があるか、聴いていて気持ちいいかどうかをベースに編集しています。

 

――では、リズム感のある声優さんが、上手い声優さんの条件でもあると。

 

そう言えるとも思います。リズムのよい掛け合いって、間と呼吸が大事で、それらは役者さん同士が作り出すものですから。そこへさらに“キャラクターらしさ”が必要です。ちょうど昨日、山口勝平さんと話していたんですけど、勝平さんが「セリフは語尾がすべてだよ」という話をしていたんです。「語尾がおもしろいかおもしろくないかで、キャラクターが決まるんだ」と。

 

――キャラクターらしさが、セリフの語尾に出るんですか?

 

そうです。勝平さんは、お酒が入るとよく野沢雅子さんの話をしてくれるんですが、野沢さんを尊敬している勝平さんは、先輩方のいろんなキャラクターのセリフの語尾を研究しているんです。これは物まねとは違うもので、偉大な先輩の技を憑依させて表現する。それを自分の個性にしてしまうところが、彼のすごいところなんですよね。
 

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