昨年、コミックス100巻が発売された人気マンガ「名探偵コナン」。100巻プロジェクトが始動し、公式スピンオフ作品2作品のアニメ化が発表され、今春には「名探偵コナン ゼロの日常(ティータイム)」が放送スタート。そしていよいよ本日10月3日(月)より、「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」が放送される。
『名探偵コナン』では、コナンたちの推理中の犯人は、全身黒い影(ブラックシャドウ)で描かれるのがお馴染みだ。本作は、この黒い影の犯人を主人公にした作品である。ある日、犯罪発生率トップクラスの米花町に、ある復讐を理由に降り立った漆黒の犯沢さん(仮名)。その犯沢さんの意外な日常に迫るクリミナルギャグの連続に注目したい本作。今回は、2回に渡り、本作の大地丙太郎監督に直撃インタビュー。前編では監督自らが行った絵コンテ作りのこだわりと、主演蒼井翔太の魅力についてたっぷり語ってもらった。
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マンガの一コマには、キャラクターのさまざまな想いが込められている
――いよいよ本日放送される『犯人の犯沢さん』ですが、もともとはどのような経緯で制作が始まったのでしょうか。
一昨年くらいに、「ギャグ作品なので、ぜひ大地さんに」というお話をいただいたのですが、そのときはすごくうれしかったですね。でも、よくよく話を聞いたら、『名探偵コナン』の犯人が主人公だということで非常に驚きました。「犯人が主人公なの?」と。それでまずは、かんばまゆこ先生が描いた原作マンガを読むところから始めたんです。
――このときに、初めて“犯沢さん”のことを知ったんですね。
そうです。でも、マンガを読んでも、正直意味がよくわからなくて(笑)。そこで、本家である『名探偵コナン』を読むことにしたんです。本家は、歴史の長い作品ですが、1巻からある程度読み進めていって、コナンの世界観をだいたい把握できたかな?というところで、『犯沢さん』をふたたび読み直しました。すると、コナンの最新のネタも入っていたり、犯沢さんが仮名だということや、犯沢さんの孤独な様子がコミカルに描かれていて、この作品がかなりシュールな世界観なんだと理解できたんです。そして、本家のことも読み進めて勉強をしながら制作にとりかかりました。
――『名探偵コナン』に出てくる全身黒い影の犯人・犯沢さん(仮名)が、ある復讐を果たすために田舎から上京してくる様子を描いた作品ですよね。
その設定って、ものすごくシュールですよね。最初は、「僕……殺す側ですから!」という犯沢さんのセリフからサスペンス風で始まるのですが、犯沢さんが米花町に引っ越して部屋探しをし、次はアルバイトを探して……という、けっこう地道な日常生活を描いている。そして時々、田舎の母親からの電話や手紙に故郷を思うといったハートフルなエピソードもある(笑)。僕は、犯沢さんのそのギャップがおもしろさだなと思いました。
――本作では、シリーズ構成さんを入れずに、監督ご自身が絵コンテを仕上げているそうですね。
はい。ギャグでショート作品だというので、その方法しかないなと思っていました。近年、僕はショート作品が多いんです。過去に携わった『信長の忍び』と『ギャグマンガ日和』も4分。そして今回の『犯人の犯沢さん』は、本編が5分半です。ちなみに『おじゃる丸』が7分半ですね。今回は、5分半という尺を掴むために、自分でコンテを作ってみました。『おじゃる丸』以外のショート作品は、全部自分で作ることが多いですね。
――絵コンテ作りで大切にしていることはありますか?
原作がある場合は、コンテ作り=原作を読み解く作業になります。コンテに一つひとつ描き起こしていくと、マンガの一コマにキャラクターの想いやいろんな情報が隠されていることがわかるんです。
――絵コンテ作りは時間がかかるものなのでしょうか?
かかりますが、世界観は見えていたので、悩んだりはしませんでした。これは僕の場合なのですが、絵コンテを描いた後に、Vコンテという、映像でコンテを作るんです。むしろこのVコンテ作りのほうが時間がかかったと思います。自分で犯沢さんや周りのキャラクターを演じてセリフを吹き込んで、編集をして、ここでようやく5分半という尺を体感できるんです。
――たしかに、絵があったほうがわかりやすそうですね。
そうなんです。そこでツッコミのタイミングや、犯沢さんのセリフの奥にある本当の心情がわかってくるんですよ。これを、アニメーターさんや音響さん、キャストさんと共有するんです。