現在、絶賛公開中の劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM [前編]君の列車は生存戦略』。本作のヒロイン・陽毬(ひまり)を演じる荒川美穂は、2015年に幾原邦彦監督が手掛けたオリジナルアニメ『ユリ熊嵐』でもヒロイン・銀子を演じている。そんな彼女から見た監督の印象、そして幾原作品の魅力とは。「WEB声優MEN」がお届けするインタビュー特集のラストを飾る、荒川美穂インタビュー第2回。(全3回)
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幾原監督は自分のことも明け透けにしない人
――荒川さんはアニメ『ユリ熊嵐』にも出演されていますね。荒川さんからご覧になって、幾原邦彦監督はどのような方ですか?
私はミステリアスな感じを受けます。例えば、アニメの展開を質問しても「どうかなぁ~」ってはぐらかされてしまうんですよ。
――木村良平さん(高倉晶馬役)もそうおっしゃってました。キャスト間で展開を予想されていたとか。
きっと“敢えて”そうしているんだと思います。ご自分のこともあまり明け透けにしない印象がありますね。でもすごく優しくて、気配りをしてくださる方です。「カリスマ」「センスのかたまり」という感じもありますし、作品作りに没頭しているときは弱音を吐くこともありますし、いろいろな面があるんですよね。なので「こういう方です」と一言で言うのは難しいのですが、やはり感性が繊細な方ではないかと思います。
――本作には村上春樹の「かえるくん、東京を救う」や宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」など、様々なモチーフが登場しますが、それらに関するレクチャーはありましたか。
私の知る限り、監督はそういったことをキャストにお話しされないんです。私はそれらの本を読んでみましたが、「銀河鉄道の夜」なら「あのキャラクターの名前はここからヒントを得ているんだろうな」という発見があったり、列車やリンゴといったキーワードもたくさん出てきたりして、そういったエッセンスを見つけるのは楽しいですよね。でも監督が「読んだほうがいいよ」とおっしゃることは、まったくありませんでした。
――『輪るピングドラム』に限らず、幾原作品の魅力はどんなところだと思いますか。
幾原監督の作品は、普段あまりアニメを観ない層の方にもすごく刺さる作品なのかなと思います。アニメ業界ではなくて、例えばナレーションの現場などでも、「アニメは普段観ないけど、幾原さんのファン」という方にお会いすることがあるんですよ。そういった幅広い層の方に刺さるというのはやっぱり、幾原さんの引き出しがとても多くて、面白い演出をされるからなんじゃないかなと思います。
――高倉兄弟妹を共に演じられた、木村昴さん(高倉冠葉役)と木村良平さんの印象も教えてください。
今回のアフレコではほとんどお会いできなくて、昴くんと少し挨拶をしただけだったので、当時の印象になるんですが……。昴くんはすごく明るくて社交的で、親しみやすい印象でしたね。良平さんはいつも現場の中心にいるイメージ。私は当時デビューしたばかりで、本当に何もわからないような状態だったので、良平さんはお兄さん的な頼れる存在でした。