いよいよ4月29日から公開される、劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM [前編]君の列車は生存戦略』。木村昴に続いて本作の特集に登場してくれたのは、高倉兄弟妹の次男・晶馬役を演じる木村良平だ。晶馬は家事が得意な男子高生で、恋愛経験が豊富な双子の兄・冠葉とは真逆のピュアな性格。そんなキャラクターを10年ぶり演じるに当たって意識したことや、幾原邦彦監督の印象を聞いた。(全3回)
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『輪るピングドラム』には裸でいくというスタイル
――今回、10年を経て『輪るピングドラム』が映画化されると聞いたときのお気持ちから教えてください。
何かしら動くということは聞いていたんですが、まさか劇場版を作るとは思っていなかったので、驚きました。それだけエネルギーを持った作品なんだなと、嬉しく思いましたね。
――実際に台本をお読みになったときは、いかがでしたか。
最初は総集編だと思っていたんです。だけど実際に動き始めたら、新録の部分も結構多くて。『輪るピングドラム』という作品は、観る人間の視点によってかなり表情が変わってくる作品だと思うので、それを幾原さんが自分の意志で切り貼りして、さらに新たなキャラクターも登場して……となると、また作品の表情も大きく変わってくる。TVシリーズとはまったく違うものになるので面白いですよね。
――木村さんが演じられる高倉兄弟妹の次男・晶馬は、常識的なお人好しで、観客と作品を繋げてくれるキャラクターです。演じるに当たっては、どのようなことを意識しながら臨まれましたか。
僕はただその役に添って演じるだけなので、今回も同じです。ただ今回の劇場版に関しては、新作パートは新たに演じたが、TVシリーズに繋がる部分を補足的に収録した部分については10年の隔たりを感じさせないように意識しました。この10年で声が太くなっていたり、元々のベースは変わっているはずなので。でも「喉がこうだから」と考えるのではなくて、当時の音を聴いて、それに沿って自分の中にいる晶馬を引っ張り出してきたという感覚ですかね。
――今回、アフレコ前の準備やレクチャー的なことはされましたか。
幾原さんや音響監督と普通にお話したくらいですかね。改めて役について訊くこともなかったので、どちらかというと「荒川さんとは随分会ってないけど、どうだった?」とか、「昴、上手になっちゃったんじゃないの?」とか(笑)。作品についての話は多少ありましたけど、幾原さんってあまり詳しく言わないんですよね。TVシリーズの頃もほとんど教えてくれなくて(笑)。収録が終わっても完成映像を見るまでわからないことがいっぱいあるし、『ピングドラム』には裸でいくという当時のままのスタイルで行きました。
――この取材前に絵コンテや台本をお借りしたんですが、私にはそれらの材料から『輪るピングドラム』の完成形を想像するのは、とても無理だなと……。
『ピングドラム』ってそういう作品なんですよ。僕も収録はしていましたが、完成した前編を観てようやく「あっ、こういうことか!」とわかりましたから。
――完成形が想像つかない状態でアフレコに臨むというのは、ある種の思い切りが必要になりそうです。
芝居をする上で本当に知っておかないといけないことは、幾原さんも教えてくれるだろうと信じるしかありませんよね。だけどそれ以外のことは「こういうことですか?」と幾原さんに訊いても、何にも教えてくれませんでした(笑)。