声優・堀江瞬さんが映画を語り尽くした書籍『SHUN HORIE ホリエル、シネマる。 1st PHOTO BOOK』。同書から、海外映画への想いの丈を綴ったインタビューを抜粋してお届けするPart2では、意外なあの映画が登場します!
※ ※ ※
映画を観て、映画に学んで育ったという堀江瞬さん。活躍中の堀江さんに海外の映画の魅惑の世界を語ってもらうと、堀江さんの個性豊かな一面も窺い知ることができました。
『ベイビー・ドライバー』(2017年公開)
『パンズ・ラビリンス』(2007年公開)
『シシリアン・ゴースト・ストーリー』(2017年公開)
陰謀論的な“妄想”を楽しむことが好き
Q.『ベイビー・ドライバー』は、孤独な青年が主人公のハイテンポなカーアクション映画ですね。
「グロいのが苦手な方にオススメしたい作品です。この映画は公開されたときにロック版『ラ・ラ・ランド』と謳われていた作品で、最初は疑っていたんですけど、観終わると妙に納得してしまいました。まず主演のアンセル・エルゴート演じるベイビーの一つひとつの行動に、音楽がハマっていてライブ感があるのが魅力ですよね。ベイビーは闇社会の運び屋で、天才的なドライバー。しかし、自分の好きな曲を聞いていないと車の運転ができない。彼のそういう性質は自分の中にも少し通じるところがあります。僕の場合は音楽ではないのですが、自分なりのルールや譲れないものがふと湧き上がるときがあって。たとえば、自宅から出かけるときに、“今日は黒い服じゃないと外に出られない!”というときがあったりします。そのくらい、なによりも“気分”を大事にしたくなるときがあるんです」
Q.わかります。そういう主人公のキャラクターの素晴らしさも去ることながら、映像もクールなんですよね。
「音楽とカーチェイスがカッコ良いんですが、それ以外にもどこかオールドな雰囲気のダイナーが登場したり、お洒落さが作品とマッチしていますよね」
デル・トロ監督の残酷な童話のような美しさがお気に入り
Q.そして、『シェイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー賞を受賞したギレルモ・デル・トロ監督の代表作『パンズ・ラビリンス』もセレクトいただきました。戦争中、軍の施設に母と逃げてきた少女がおとぎ話と出会い、想像力で、狂気の領域に踏み込んでいきます。
「僕はデル・トロ監督の作品世界がすごく好きで、残酷な童話のような感じが気に入っています。とくに忘れられないのは、手に付いた目を顔に当て、急に動き出すペイルマンという怪物。気味の悪さと人間の生々しい感じが共存している造形なんです。監督の描くクリーチャーは妙に人間らしい感じもあって、そこも素敵です」
Q.細かな仕掛けもたっぷりですよね。
「そうですね。主人公・オフェリアの服装が『不思議の国のアリス』のアリスの服装だったり、些細な仕掛けがたくさんある映画だと思います。最後のほうの彼女が穴の中に潜っていく感じも、彼女自身の新たなスタートのようにも僕には見えるし、世界は違えど作品作りに関わる一人として、観るたびにいろんな気付きをもらえます」
Q.過酷な現実と暗いファンタジーを共存させて、グロテスクな中にも美しさがあるのはデル・トロ監督らしさですね。
「『シェイプ・オブ・ウォーター』もですが、ただのハッピーエンドではないですし、いろいろな余白がある。その余韻感も好きな理由です」
Q.シビアな現実を描いた『シシリアン・ゴースト・ストーリー』も残酷さの中に叙情を醸し出す作品です。最初は少年と少女の恋物語なのかと思っていると意外な展開を見せますね。
「これは実際に起きた少年の誘拐事件がベースになっている作品です。序盤はとにかく少年ジュゼッペと主人公の少女ルナが微笑ましくて、可愛いし、見とれてしまうんです。だけど、ジュゼッペが失踪し、マフィアに監禁され、彼の命が危ういのがわかっていく。だからこそ、彼に助かってほしいと観ている間ずっと願ってしまう。とにかく哀しいお話です」
Q.後半に夜の海のシーンがあって、素晴らしいんですよね。
「僕もそこは大好きですね。ジュゼッペが海を見渡すシーンですよね。そこは、この映画でいちばん残酷でもあるし、いちばん美しいシーンだし、ふたりの救いになっている場面だと思います。それだけに恋の儚さが胸に残っています。ふたりが寄り添いながら眠るシーンの健気な姿に心惹かれました」
リリシズムとドライさの中で揺れる主人公たちが登場し、切なく胸を締め付けれる……。堀江さんが自身に影響を与えた映画を止めどなく教えてくださった今回。
次回はいよいよ「外国映画編」の最終回となるPart3。どんな映画が出てくるのでしょうか。お楽しみに!
<過去記事>
『SHUN HORIE ホリエル、シネマる。 1st PHOTO BOOK』では、他にも堀江さんのオススメ映画を紹介しています。詳細はコチラ!
『SHUN HORIE ホリエル、シネマる。 1st PHOTO BOOK 』
発売中
定価:2,200円(本体2,000円)
判型:B5判
ISBN 978-4-575-31596-7