福山潤がサンキュータツオと語り合う! アニメと日本語の現在(3)サンキュータツオ「“今頃、あいつ何をしているかな?”と思わせてくれるキャラクターが好き」の画像
日本語学者でお笑い芸人のサンキュータツオ(左)と人気声優・福山潤(右)。

声優として数々の代表作を生み出す声優・福山潤と、お笑いコンビ・米粒写経として活動しながら、『広辞苑』の編纂にも関わった日本語学者でもあるサンキュータツオ。10月22日に刊行された書籍『福山 潤 プロフェッショナルトーク』から、その対談の一部をクローズアップ! 今回は、福山がサンキュータツオに「心に残る作品」とは何かを尋ねる。

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「役柄を自分で選んだことは一度もない」(福山)


福山 僕は声優なので、常に芝居のことを考えているんですけど、タツオさんが思う「良い芝居」ってどんなものですか。
タツオ 僕は「芝居」に関しては素人なので、実際に声優さんがやられていることの本質は分かりませんし、芝居部分だけを抜き取って「良い」「悪い」を判断することもないですね。どちらかというと画や音楽も含めた全体として受け取っています。その中で、僕が良いなと思うのは、アニメを観ていないときにもふと“今頃、あいつ何をしているかな?”って思わせてくれるキャラクターが好きです。それってまさに僕の中で生きているということなので、僕にとってはそう思えるキャラクターを演じてくださった人が「良い芝居をする、良い声優さん」になります。もちろん福山さんもその一人で、作品自体が終わって随分と経っても、時折、演じたキャラクターに“あの子は今頃ずいぶんと大人になっているんだろうな…”って思い返したりします。
福山 ありがとうございます。実は、僕がそういう感覚を抱くのは圧倒的に『機動警察パトレイバー』なんです。僕が21歳になったときには「もうあの時の泉野明の年齢に追いついちゃったな」とか、節々で思い返すんです(笑)。最近ではついに野明の上司である、後藤喜一さんの年齢にも追いついちゃって、さすがに驚きました(笑)。
タツオ 分かる(笑)。劇中では完全なおじさんとして描かれていたキャラも、実はギリギリ30代とかだったりするんですよね。意外と若いことに驚くと同時に、自分も若い人からはこう見えているのかと思ったり(笑)。
福山 そうなんです。まあ後藤さんに限っては四十男なので、言い訳のしようもなくおっさんなんですけど(笑)。
タツオ でも声優さんって、やろうと思えば実年齢に縛られずにいろいろなキャラクターを演じることができるわけじゃないですか。ただ、福山さんは年齢とともに、役柄自体がどんどんと変化しているイメージがある。これは僕の推察ですが、ご自身の身体性も含めて、その時期ごとに最適な役柄を選んでいるのかなとも感じるんです。意識的にご自身が挑戦されて進化を促しているというか。
福山 確かに自分の感性や身体の変化に合わせて、どんどん進化していきたいと思っています。ただ一つだけ違うのは、僕は役柄を自分で選んだことは一度もないんです。
タツオ そうなんですか!
福山 僕は、自分が良くも悪くもキャスティングする人たちのオモチャだと思っていて。無茶振りされることも多いですし、何かやってくれるという願望を込めて役をくださることが多い。しかもそれが類型的なキャラクターではないので、きっと僕のことをどう捉えているかが、人によって全然違うんでしょうね。
タツオ 声優さんとしては最高なことですね!
福山 ありがたいことにそこは、自分でも素直に最高だなと思っています。

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いよいよ盛り上がる芝居論は、AIや新たなテクノロジーの話へ進んでいく……!? ふたりの会話の全貌は、現在発売中の『声優MEN Vol.20』と、その対談のロングバージョンを掲載した書籍『福山 潤 プロフェッショナルトーク』をぜひチェック!

 

 

■PROFILE
●福山 潤 ふくやま じゅん
11 月 26 日生まれ、大阪府出身。 2007 年、初代声優アワード主演男優賞受賞。
『無敵王トライゼノン』で初主演。代表作に『コードギアス 反逆のルルーシュ』(ルルーシュ・ランペルージ)、『吸血鬼すぐ死ぬ』(ドラルク)、『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』(スマット)、『Vivy -Fluorite Eye's Song-』(マツモト)、『暗殺教室』(殺せんせー)、『七つの大罪』(キング)、など。
近年はアーティストとしても活躍。

●サンキュータツオ さんきゅー たつお
1976年生まれ、東京都出身。早稲田大学大学院卒。大学在学中に、居島一平とお笑いコンビ「米粒写経」を結成。また数々の大学で日本語学の講師を務め、『広辞苑』第7版では言葉の選定を担当した。近年は『東京ポッド許可局』でラジオレギュラーを務め、テレビ、配信番組などに出演する他、多数の連載を持つ。著書に『学校では教えてくれない!国語辞典の遊び方』、『これやこの サンキュータツオ随筆集』など。新著『国語辞典を食べ歩く』が発売中。