■未来の若者を応援する世界観
見どころとしてはやはり、ヒビキさんの飄々としたカッコよさ。手首を回しながら敬礼のような仕草で「シュっ!」と決める姿に、ダンディズムを感じる。口癖は「鍛えてますから」で、その言葉通りつねに山奥で厳しい鍛錬を積んでいる。まさに“師匠”と呼ぶにふさわしいキャラだ。ストーリーの前半でも、明日夢がヒビキに弟子入りしようと交流を深める様子が多く描かれていた。
「自分を信じること、それが自分が自分らしくあるための第一歩なんじゃないか」
「正しく生きてても、傷つけられたり、踏みにじられたりする。けどね、少年の人生は少年のもんなんだよ。もし今すごくつらいと思うなら、これからはつらくならないようにすればいい……まあ生きてりゃさ、何度も転んでそのたんびに傷を作ったり、あざを作ったりすると思うんだよね。でもそんなとき、心だけは強く鍛えておかないと、自分に負けちゃうんじゃないか」
などなど、多くの名言が、細川茂樹の肩の力を抜いた説教臭さを感じさせない口調で語られるのである。特に後者の名言が出た第二十九之巻『輝く少年』は、「万引きをとがめたら、後日不良に報復された」という出来事で傷心状態だった明日夢を登山へ誘い、夜にたき火をしながら2人で語り合う、という映像の美しさも相まって、名シーンに挙げられることが多い。
そして、『響鬼』の魅力を語るうえで欠かせないのが主題歌。響鬼の主題歌を担当したのは、驚くべきことに布施明なのだ。年間通して、前半はエンディングテーマ『少年よ』、後半はオープニングテーマ『始まりの君へ』を歌い上げた。どちらも、若者(明日夢)を激励する内容の歌となっていて、ファンの間では評価の高い名曲である。
『鬼滅』を楽しんだあとは、同じく和風モチーフの響鬼を楽しんでみてはいかがだろうか。(特撮ライター・トシ)