■主人公は仮面ライダーを見つめる少年

 作風も独特で、筆文字や漢字など「和」の要素が強調されているほか、中学3年生(途中で高校1年生)の少年・足立明日夢(あだち・あすむ)が、事実上の主人公として扱われているのも特徴だ。明日夢は最後まで鬼(仮面ライダー)にはならないが、物語は基本的に彼の視点で進む。

 大人の事情で中盤から作風が変わったことについては賛否あるが、1年間通して「悩み多き少年が、師匠である大人を通じて成長していく」という物語が描かれた。当時の平成ライダーは多人数ライダーがバトルロイヤルする異色作『龍騎』が大ヒットした影響もあり、「ライダー同士の争い」や「仲間同士でもギスギスした人間ドラマ」という要素が目立っていたが、響鬼に登場するライダーたちは温厚で正義感の強い人格者ばかり。『鬼滅』でたとえるなら、全員が炭治郎レベルに人当たりがいい。

 また、独自要素の1つに、「高い年齢設定」が挙げられる。基本的に仮面ライダーの主人公は10代後半~20代前半の「お兄さん」だ。09年の『仮面ライダーW』当時16歳だった菅田将暉のように、演技未経験の若手も珍しくない。

 しかし、『響鬼』の主人公・ヒビキさんこと日高人志を演じたのは、当時33歳だった細川茂樹。劇中で最年少の鬼である仮面ライダー轟鬼(トドロキ)を演じた川口真五も26歳だった。高めの年齢設定が、より落ち着いた頼れる大人の感じを出している。

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