■「悪い子どもこそ、本当に悪い大人の格好の餌食になるからさ」

『鎧武』に登場した“悪い子ども”は、高杉真宙(24)が演じた仮面ライダー龍玄こと呉島光実(くれしま・みつざね)。劇中では主に“ミッチ”と呼ばれていた。

 当初のミッチは、腹黒い一面をのぞかせながらも、純粋に主人公・葛葉紘汰(佐野岳)を慕う後輩だった。しかし、物語が進むにつれて自分の思うように動いてくれない紘汰や、想い人である舞(志田友美)にイラ立ちを募らせて対立。しかも、自身のことを「周囲を利用してうまく立ち回っている」と勘違いし、どんどん増長していった。

 一時期は敵怪人の配下につき、その際も「勝手に踊って壊れていく。最高によくできたオモチャ」と評価されていたがミッチだけは気づかず、自分は正しいと思い込んでいたのだ。「仲間っていうのは、僕の思い通りになる人物のこと」という暴言まで吐くようになってしまった。

 そして、そのツケが取り返しのつかない形で回ってきたのが、第43話「バロン 究極の変身!」だ。ミッチは物語のカギを握る重要なアイテム“黄金の果実”を託されて意識不明の重体になってしまった舞を助けようと、戦極凌馬(青木玄徳)の力を借りたのだが、彼こそが“悪い大人”だったのである。

 実は戦極は“黄金の果実”を狙っており、ミッチをそそのかして舞の手術と引き換えに葛葉紘汰の殺害を指示。ミッチに紘汰を殺害させたうえ(のちに蘇生)、舞は戦極によって心臓と一体化していた果実を摘出され、死亡してしまう。戦極は、最初から約束を守るつもりなどなかったのだ。「一生懸命やったのに!」と泣きじゃくるミッチを戦極はあざ笑い、次のような言葉を投げかけた。

「その子を助けるために私を利用するとか、そういう思惑だったんだろうねぇ」
「君は本当に子どもだなぁ。大人の手口というものをまったく分かっていない」
「教わらなかったのか? なぜ悪い子に育っちゃいけないか、その理由を。ウソつき、卑怯者……そういう悪い子どもこそ、本当に悪い大人の格好の餌食になるからさ!」

 この場面は「大人っぽくてカッコいいスーツを着て、泣きじゃくる子どものミッチ」と「子どものようなラフな服装で、嬉々としてミッチを蹂躙する大人の戦極」という見た目の対比も手伝い、視聴者に絶大なインパクトを与えた。本来のメインターゲットである子どもにも、このセリフによって「悪い子になってはダメ」と、これ以上なく伝わったことだろう。

 この「悪い子と悪い大人問答」について、『鎧武』の脚本を担当した虚淵玄氏が「鎧武でいちばん伝えたかったこと」としていたことを、2014年のイベント『仮面ライダー鎧武 ファイナルトークショー』で出演者が明かしている。

 また『仮面ライダー鎧武ザ・ガイド』(講談社)のインタビューによると、虚淵氏はミッチについて、子どもからは格好良く見えるかもしれない「賢く上っ面だけを取り繕う立ち回り方」に大人の立場から異を唱えることも意識していたという。

『MIU404』の成川も、経緯は違えどミッチと同じように道を踏み外し、“悪い大人”にとっては最高のカモである“悪い子ども”となってしまった。

 幸いにも成川は井戸の底の最悪の場面で、“いい大人”である第4機捜により救い出され、逮捕された。ようやく罪を償う機会を得ることができたが、同時に久住と第4機捜の本格的な対決が近づいていくことが予告で示唆されている。いよいよクライマックスを迎える『MIU404』。“悪い大人”菅田の暗躍に、目が離せないーー。

(特撮ライター・トシ)

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