■不可思議な行動が多い、ファミコンの山岡さん
今作では呪文を使って警察官と戦う暴力的な山岡さんの他にも、キャラ崩壊した姿が多数見られます。実家・美食倶楽部では、ネコのマネをしたりゾウのマネをしたりバカのマネをしたりして、父・海原雄山から逃げ回ったりします。雄山も雄山で、庭から山岡のマネするゾウの鳴き声を聞いて、「なんだゾウか。このへんにゾウがいるとは驚きわい!」と喜ぶという、原作にはない姿が楽しめます。
そういった選択肢でのバカさ以外は、原作どおりにいたってまじめに進む料理アドベンチャーなんですが、「即死」が多いのも今作の特徴です。
たとえば、第1章ではアンコウを調理する場面で即死が連続します。調理の途中で食材を捨てて、山岡さんが世の中のすべてがいやになってしまい、ゲームオーバー。山岡さんが、アンコウを殴って腕の骨を折って即死。アンコウをぐちゃぐちゃに切ってしまい即死。「つるす」「口に水を入れる」「かわをはぐ」「はらをさく」「かんぞうをとる」「むす」という原作に書かれている工程をバッチリ熟知していないと山岡さんはすぐに死んでしまうんです。
選択肢もむちゃくちゃなのです。アンキモの調理法を学ぶべく、小料理屋「てんもく」を尋ねる場面では店の前で下記のような選択肢が出てきます。
1、まどをのぞく
2、さわぐ
3、とをたたく
4、うそをつく
1、2、3、のどれかが正解であろうと思います。しかしこれがすべて不正解であり、そのあとの選択によっては、山岡さんは警官と戦って殺されてしまいます。
実は正解は4! 4を選ぶと、山岡さんが「こんなところにシマアジが落ちてるぞ!」と叫び出し、それを真に受けた小料理屋の主人が店を飛び出してくるという展開です。一番ありえないし、誰もいないお店の前で誰に嘘をつくんだって話です。
ファミコンソフト『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』は、ゲームとしては面白いのですが、原作のことを考えると、やはり“どバカゲー”と言っても過言ではないでしょう。単なる原作移植でなく、特徴をつけたかったのか、なぜこのような展開や選択肢を入れたのか、いつか製作者に話を聞いてみたいところです。
料理系ゲームのバカゲーといえば、プレイステーションソフト『クッキングファイター好』があります。ゲームイベントなどでよく使わせていただくのですが、この作品はミスター味っ子風のアニメーションで、声優も同じ方を使っていたりとネタが豊富。まじめな料理ゲームと思いきや、料理対決で相手と包丁で切り合い、食材を奪い合うアクションゲームになったり、群を抜いているバカさですので、また別の機会にでも。