■炭治郎に発現した「痣」の謎

 もうひとつ気になるのが、強者だけに発現する入れ墨の様な「痣(あざ)」の存在。発現者は「痣者(あざもの)」と呼ばれ、1人「痣者」が現れると、呼応するように「痣者」が生まれるという伝承が産屋敷家に伝えられていた。

「痣」の発現者は“25歳”というタイムリミットつきの短命になることと引き換えに、飛躍的に能力がアップ。炭治郎に「痣」が発現したことをきっかけに、鬼殺隊の「柱」と呼ばれる強者のほとんどが「痣」の発現者となった。しかし、この痣がいったいどんな力を秘めているのかは正直よく分からない。

 さらに、この「痣」が炭治郎に発現した理由も今ひとつはっきりしない。その時点の純粋な実力でいえば、ほかの「柱」のほうが上だったのは明白で、炭治郎は最初の発現者である継国縁壱と血縁関係というワケでもない。強いて言えば炭治郎は「ヒノカミ神楽」を代々受け継ぐ竈門家の血筋で、縁壱の「花札の耳飾り」をつけていた点だろうか。

 ほかにも鬼である禰豆子に発現した痣や、短命というデメリットを縁壱だけが克服した理由も語られていない。そして最終的に生き残った「痣者」の剣士たちが、その後寿命をながらえたのかどうかは読者の想像にゆだねられていた。

 こうした内容は、伏線の未回収というより読者にさまざまな解釈と考察の余地を残してくれた、とも言える。また、『鬼滅の刃』最終回の掲載号では、スピンオフ短編『煉獄外伝』の掲載も発表。このように、本編が終了しても作品世界が広がり続けるなら、上記のような“謎”についても、いずれ描かれる機会があるのかもしれない。

(文・ねげつ)

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