どうも、仮面ライダー芸人のしいはしジャスタウェイです。
みなさん、高岩成二という人はご存知ですか? 知らない方のために簡単に説明しますと、高岩さんは平成仮面ライダー20作品中、『クウガ』と『響鬼』をのぞく18作品の主人公仮面ライダーを演じた「スーツアクター」で、仮面ライダーの変身後の姿を演じた俳優です。
ファンからすれば神にも等しい存在なんですが、特撮になじみのない人から見たスーツアクターというと、「ああ、着ぐるみを着てデパートの屋上でヒーローショーやってる人か」といった程度の認識なのかもしれません。ではみなさん! ヒーローショーではショーの後にヒーローが子どもたちと写真を撮ったりしますが、目隠しをした状態で顔に手が被らないように一発でカッコいいポーズを取ることがどれほど難しいことか知っていますか?
人間は視覚や動きを限定された状態だと、それはもうみっともない動きをします。ためしに、ドンキで何かのマスク買って被って、ダンボールを肩とか腕とか脚とかに着けてカッコいいイメージを持って動いてみると良いと思います。そしてそれをスマホに撮ってみて下さい。たぶんめちゃくちゃヘンな動きをしちゃうはずです。とりあえずその動画はTikTokにでも投稿しましょう。スーツを着てマスクを被って演じるってのは、それだけ難しいってことなんですが、スーツアクターというのは、誰よりもかっこよく、しかもそれを一発で確実に出来ちゃう人なんです。
マスクの表情は変えられませんので、喜怒哀楽を表現するためには首や顔の角度を変えることで感情を見せるしかない。
たとえば、『囚われた仲間を助ける瞬間、目の前でその仲間が殺されてしまった』。
このシーンを演じるときにプロのスーツアクターはどう見せるのか。
仲間が殺された瞬間、目を見開く。口を開け、涙を流す。通常の俳優がやるであろう、これらの演技はマスクを被っていたらいっさい出来ないんです。じゃあどこで表現するのか? マスクの角度を変えたり、肩を上下に揺らしたり、拳を握ったりと体で表現します。しかし、それはあくまでもテクニックの部分。そこにプラス、キャラクターの個性を出す“お芝居”という部分が求められるんです。
■「動かない」という演技を極める
スーツアクターというお仕事で、このお芝居にとにかくこだわったのが、高岩成二さん。ライダーを演じるまでは戦隊の現場にいた高岩さん。仮面ライダーの現場で苦労したのが「動き」だったそうです。はじめのうちは、戦隊流にデフォルメした動きをしてしまったため、とにかく「動きすぎ」と監督から注意を受けたそうです。
試行錯誤していくうちに高岩さんは「動かない」という演技を見つけたそうです。動かないなんて、下手したらただボーッと映ってるだけになってしまい、怖いと思います。もし自分が顔を包帯でグルグル巻きのミイラにされて「動かないで目の前の人に喜怒哀楽を伝えて下さい」なんて指示をされたら、2秒でギブです。思わず動いちゃいます。絶対無理ですもん。
けど高岩さんは「動かない」を貫いた。しっかりと気持ちを入れ、その気持ちを全身に込め、「動かない」芝居を成立させたんです。そこにプラス、それまでに習得したさまざまなテクニックを乗せ、独自の仮面ライダーの芝居を確立させていったんです。