岸谷五朗
岸谷五朗
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 人生初麻雀なんですよ、僕。

 周りの話を聞いていると、若い頃に一度くらいは打ってみたことがあるという人が多いみたいなんですが、僕はこれまで牌を触ったこともなかった。というのも、多くの人が麻雀と出会うであろう20代の頃、僕は芝居の稽古とバイトとレッスンに明け暮れていたので、麻雀どころかパチンコをする時間もお金もなかったんです。お金があったら飯を食いたかった(笑)。

 だから、今回『天 天和通りの快男児』という麻雀がテーマの作品を「やる」と決めるには勇気がいりました。でも逆に言うと、すごく興味があったんです。麻雀という未知の世界に飛び込んでみたい、と強く思いました。

 やると腹をくくってからは、牌の持ち方をプロの先生から教えていただいたり、実際に雀荘へ足を運んだりしながら、麻雀という世界と、僕が演じる“天貴史”という男へのアプローチを始めたわけですが、これがとてつもなく面白い!

 何が面白いって、麻雀は人間そのものなんです。

 麻雀をやると、打つ人間の本質がダイレクトに見えてくる。それまでどんなふうに生きてきたか、ごまかしようもなく出てしまう。そして、気づいたんです。

 ――?これは、俳優と同じだ、と。

 俳優は役という他人を演じるわけですが、不思議なもので演じれば演じるほど、その人の本質がはっきりと見えてきます。

 麻雀も、ふだんどんなに表面を取り繕っていたとしても、いったん、卓を囲んで牌を手にすると、その人がどんな生き方をしてきたのかが浮かび上がってくる。

 これがドラマにならないわけがありません。さまざまな人生を生きてきた4人の男が、腹の中でいろんなことを考えながら牌を打ち、勝負をかける。究極の心理戦です。

 ツモって切るという、普通ならコンマ何秒でやっていることをグーンと引き延ばして、見せる。モノローグが入り、それぞれの表情が入り、手元の表情が入る。面白くないわけがない。

 とはいえ、撮影現場は大変(笑)。シーンのほとんどは雀荘で、朝の6時くらいから夜の9時くらいまで、ずーっと同じ席に座ってる。しかも、全員がひと癖もふた癖もある男たちで、ヒロインはなし。がっかりですよね(笑)。でも、とてつもなく面白い。今は、人生初の麻雀という博打にどっぷり浸かっています。

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