現実世界の軍隊における兵器の運用戦略に「ハイローミックス」と呼ばれる考え方がある。これは、高価な高性能機(ハイエンド)と安価な機体(ローエンド)を組み合わせて運用することを指す。質と量のバランスをとり、限られたリソースの中でパフォーマンスを最大化させるための戦略とされている。
そんなハイローミックスと同様の運用方法は、フィクションである『ガンダム』シリーズの中でもたびたび見られた。たとえばアニメ『機動戦士ガンダム』で描かれた一年戦争時、地球連邦軍の量産機「ジム」と支援用モビルポッド「ボール」の組み合わせは、剣士と弓兵にも例えられ、大きな戦果を挙げている。
そこで今回は、ガンダムシリーズの中で登場した印象的な「ハイローミックス」運用らしきケースを紹介。どのような組み合わせで用いられたのか、あらためてその内容を振り返ってみたい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■歩く戦略兵器と、それを守る量産機のコンビネーション
アニメ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に登場したデストロイガンダムは、全高56.3mにも及ぶ巨体に圧倒的な火力を備えた可変モビルスーツ。オペレーションシステム起動時は「巨大制圧火器集約要塞」と表示される。
多彩な武装に加えて、陽電子リフレクターシールドと呼ばれるビームシールドを持ち、実弾とビーム両方に高い防御力を誇る、まさに要塞と呼ぶにふさわしい大型機体である。
「歩く戦略兵器」というコンセプトで開発され、それを体現するような大型機体だが、巨大すぎるゆえに一度懐に入られると対抗手段がないという弱点もあった。それを補うためにウィンダムやダガーといった量産機を随伴させるシーンが描かれている。
陽電子リフレクターによる防御は鉄壁で、デストロイに有効打を与えるには接近戦を挑むほかない。しかし、それを阻止するためにウィンダムなどの量産機が運用され、デストロイに近づけさせないという戦略がとられた。
デストロイと随伴機の組み合わせによるコンビネーションの効果は絶大で、多くの一般兵が犠牲になる。そのデストロイガンダムに有効打を与えるには、巨大機が繰り出す猛烈な火力を回避しつつ、ハイローミックス的な随伴機を撃破した上で、懐に飛び込んで攻撃を加える必要がある。それがいかに難しいことなのかはいうまでもなかった。
だが、劇中でシン・アスカたちは、それを平然とやってのけた。これはデストロイの運用方法に問題があったというより、彼らの操縦技量の方が異常だったといえるだろう。
実際にデストロイガンダムと量産機による組み合わせは各地で多大な戦果を挙げており、続編である劇場版アニメ『SEED FREEDOM』にも登場。整備不十分な状態ながら暴れまわるが、キラ・ヤマトのライジングフリーダムらによって撃破されている。
■一年戦争から50年後に、まさかのボールが活躍!?
長谷川裕一氏のコミック『機動戦士クロスボーン・ガンダム』(KADOKAWA)の劇中で、地球連邦軍は量産型F91ガンダムを採用。しかし高価な機体だったためか、数の不足を埋めるために同時運用されたのが、まさかの「133式ボール」である。
133式ボールは、その名の通り宇宙世紀0133年に生まれ、0079年の一年戦争で活躍したボールから約50年もの時を経て、再び主戦場に戻ってきた。兵士からは「ハイ・ボール」の愛称で呼ばれている。
プレイステーション用ゲームソフト『SDガンダム GGENERATION-F』(バンダイ)の133式ボールの解説文によると、機体上部に取り付けた低反動砲が3門に増加している以外の基本的な性能は、かつてのボールと大差ないという。
そしてコミックには、量産型F91と133式ボールの組み合わせは、中隊クラスの規模であれば、当時の量産型の主力機ジェムズガンで部隊編成した時と、ほぼ同コストまで抑えることができたとされていた。
とはいえ劇中で133式ボールの登場シーンは限定的で、量産型F91とのハイローミックス運用の有効性は定かではない。いくら頭数を揃えようと、さすがに0133年のモビルスーツに対してボールの性能不足は明白だ。戦果を挙げられるかどうかは、虎の子の量産型F91ガンダムを操るパイロット次第といったところだろうか。


