■不可視の矢印で対象の動きを自在に操る!矢印鬼・矢琶羽
「竈門炭治郎 立志編」では、炭治郎が浅草の雑踏の中、鬼の始祖・鬼舞辻無惨と遭遇する一幕があった。自身の存在に気づいた炭治郎を警戒した無惨は、すぐさま彼を始末するよう配下の鬼を差し向ける。それが、矢琶羽と朱紗丸の2人だ。
鬼でありながら無惨討伐を志す珠世と出会い、彼女の屋敷に身を寄せていた炭治郎だったが、痕跡をたどってきた2人に襲撃されてしまう。
そこでまず猛威を振るったのが、朱紗丸の放つ毬だった。強烈な破壊力だけでなく、予測不能な軌道で縦横無尽に襲いかかる毬に苦しめられる炭治郎。その強力な攻撃は、珠世や彼女に仕える愈史郎にも重傷を負わせるほどだった。
毬の動きに翻弄され続けた炭治郎は、視覚に特化した血鬼術を使用する愈史郎から札を借り受け、視界を共有したことで局面が一変する。愈史郎の「矢印を見れば方向がわかるんだよ」の言葉通り、そこには毬の軌道を折り曲げる「矢印」が存在していた。
朱紗丸の毬を操っていた正体こそ、もう1人の鬼の矢琶羽だった。彼の血鬼術「紅潔の矢」は、不可視の矢印を付けた対象の動きを自由に操ることができる能力である。毬だけでなく、人間や刀さえも強制的に操れるため、攻撃しても刃が当たった瞬間に弾き飛ばされ、まともに斬ることすらできない。
「十二鬼月」でもない序盤に登場した鬼でありながら、愈史郎の視覚共有がなければ炭治郎は矢印の存在にすら気づくことはできなかっただろう。そう思うと、非常にやっかいな“初見殺し”の血鬼術であったといえるだろう。
『鬼滅の刃』に登場する鬼たちは、さまざまな血鬼術を使い、鬼殺隊の前に立ちはだかる。ここで紹介した半天狗の分裂能力、魘夢の強制催眠、そして矢琶羽の不可視の矢印は、いずれも初見時には仕組みを見抜くことすら難しいものばかりだ。
圧倒的な力で相手をねじ伏せるだけでなく、思いもよらない方法で追い詰める血鬼術も、鬼たちが秘めた恐ろしさの1つ。もしも自分が鬼殺隊士だったら……と想像すると、彼らの戦いがいかに過酷を極めるものであったか、あらためて実感させられる。
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