友達を守り、自力で良い点を取り、九州まで走り抜く…『ドラえもん』のび太が覚醒した「隠れたド根性回」の画像
『おとなになるのび太たちへ』人生を変える『ドラえもん』セレクション(小学館)

 昭和・平成・令和と約半世紀にわたって愛され続ける、藤子・F・不二雄さんの『ドラえもん』。その主人公である野比のび太といえば、ドジを踏んではドラえもんに泣きつき、ひみつ道具に頼っては調子に乗るのがお決まりのパターンだ。

 だが、数ある物語の中には、のび太が本気でド根性を発揮し、自分の力で困難を乗り越えたエピソードも存在する。たとえば、てんとう虫コミックス第6巻収録の「さようなら、ドラえもん」では、のび太がドラえもんに頼らずたった1人でジャイアンに立ち向かっている。

 この姿は映画『STAND BY ME ドラえもん』(2014年)でも描かれ、大きな感動を呼んだが、原作には他にも読者を驚かせるようなのび太の覚醒回があるのだ。

 今回は、のび太が秘めたる底力を見せた「隠れたド根性回」を厳選して紹介したい。

 

※本記事には作品の内容を含みます。

 

■自分より弱い友だちを守るため…ジャイアンに立ち向かった「ぼくよりダメなやつがきた」

 てんとう虫コミックス第23巻収録の「ぼくよりダメなやつがきた」は、のび太よりも勉強や運動が苦手な転校生・多目(ため)くんが登場する。

 新しくクラスにやってきた多目くんは、のび太よりもテストの点数が悪く、かけっこも遅い。当初、のび太は自分より劣る多目くんに対して優越感を抱き、何かにつけて見下した態度をとってしまう。

 その様子を見かねたドラえもんは、ひみつ道具「配役いれかえビデオ」を使い、のび太の立場にスネ夫を、多目くんの立場にのび太を配役し、入れ替えた映像を見せる。それを見たのび太は、自らのふるまいのひどさに激しいショックを受けるのだ。

 その足でのび太は、ジャイアンたちにいじめられている多目くんを助けに向かう。そして、殴られそうになっていた彼を庇い、自らジャイアンの拳を受けるのであった。

 このエピソードは『ドラえもん』の中でも、人間の弱さや心理を鋭く突いた屈指の名作だ。自分より弱い存在を見つけて安心してしまうのは、程度の差こそあれ、多くの人も持ちうる感情だろう。

 しかしのび太は、そんな自分の態度を振り返って猛省し、最後は体を張って友だちを守り抜いた。ボロボロになって帰ってきたのび太に、ドラえもんが「よくなぐられた!!」と褒めるシーンも印象的だ。

 その後、多目くんは再び転校してしまうが、別れ際に涙を流してのび太に感謝を伝える。それは、のび太が勇気を出してつかんだ「真の友情」の証といえるだろう。

■自分で勉強し汚名返上した「のび太の0点脱出作戦」

 てんとう虫コミックス第37巻収録の「のび太の0点脱出作戦」は、珍しくのび太が自らの意志で努力し、テストで良い点を取るエピソードである。

 ある日、4回連続で0点を取ってしまったのび太。言葉も出ないほどママの怒りは頂点に達していたが、次の日もテストが待っていた。ドラえもんから「30点は取れ!」と叱咤激励されて机に向かうも、のび太は相変わらず道具に頼ることしか考えない。

 その後、のび太はタイムマシンを使って1週間後の未来に行き、出木杉の解答を盗み見ようと画策する。しかし、未来の出木杉の部屋で待ち受けていたのは、カンニングを阻止しようとする「未来の自分」であった。

 そして、やむなく自力で勉強することを決意したのび太。ひみつ道具「時門」で時の流れをゆるやかにし、猛勉強に励んだ結果、テストで65点を取ることに成功。周りから褒められ、のび太も「自分だけの力でここまでやれた」としみじみ感動する。

 そして物語の最後、のび太はタイムマシンに乗り、安易な道を選ぼうとする「過去の自分」の根性を叩き直しに行くのである。

 ふだんはひみつ道具に頼って楽をすることばかり考えているのび太が、未来の自分に殴られたことで目を覚ます展開が実に痛快だ。見事に良い点を取って終わるだけでなく、最後は過去の未熟な自分を戒めに行くという伏線回収も見事である。

 本来のび太も「やればできる力」を持っていることを証明したこのエピソード。だからこそ、いつもの怠けぶりが余計にもったいなく感じられるのである。

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