■2026年を代表する“問題作”第4位は『ヤニねこ』
第4位は、問題作『ヤニねこ』です。なんでアニメーションでやろうと思ったんだよ。なんでアニメーションにできたんだよ。3301! 3301!
原作は「ヤングマガジン」連載中のにゃんにゃんファクトリー先生のマンガで、人間と獣人が共存する世界を舞台に、タバコを吸ってだらだら暮らす獣人「ヤニねこ」たちの日常を描くギャグ作品。金なし、生活力なし、マナーもモラルもなし。本当に何もないんですよ。◯すぞ。
登場キャラも、ヤニねこ、ヤクねこ、ハメねこ、カンサイねこ、アルねこと、名前の時点でもうアウト寄りのラインナップ。極めつけは、お〇んぽ達郎です。アナウンサーとして声に出して読みたい日本語。春アニメの『インゴクダンチ』といい、多様性にあふれる素敵な時代、令和8年。
それでいて作画が綺麗なのが笑ってしまう。綺麗なのに、やっていることは一日中タバコと酒とゲーム。ネットの感想でも「映像はめちゃくちゃ綺麗なのに、内容はなんもねえ」と、まさにオープニングのタイトル通りの評され方をしています。
でもこれ、綺麗に描けば描くほどヤニねこたちの汚さとだらしなさが際立つという、確信犯的なアレね。タバコや酒やゲームにあふれた生活の破滅っぷりへの風刺にも読めるし、「傍からどう見えようが、自分の幸せは自分で決めればいい」という肯定にも読める。読めるかな? ヤクは絶対ダメだけど。
現実のどこかにいないこともないかもしれない、あそこまでではないけどちょっとだけ自分と被るところがあるかもしれない、そんな感じでダラーッと見ていると、なぜかクセになってくる怪作です。妹子だけほんと健やかに育ってほしい。
オープニング曲は忘れらんねえよの「なんもねえ」、エンディング曲がネクライトーキーの「煙とブルー」と、脱力ソングで固めた布陣。キャストが歌うシリーズだったり、OPとEDの歌い手を変えたりとか、インターネットの住人たちが触れざるを得ない施策もあって、常に話題に上がるプロモーションも素敵でしたね。
「こんなくだらない作品(褒め言葉)に、これだけのお金と技術をかけられること自体が現代社会の豊かさ」という名言もネットで見かけましたが、本当にその通り。よく笑わせてもらいました。初回でヒロインがクソするアニメは名作の系譜原点となるかもしれない。
■こんな少佐みたことない!? 第3位は『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』
君はこれまでのアニメ『攻殻機動隊』シリーズで、草薙素子を可愛いと思ったことはあるかい?
第3位は『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』。士郎正宗先生の原作コミックをベースにした新作で、アニメーション制作はサイエンスSARU。押井守監督の映画版でも、神山健治監督の『S.A.C.』シリーズでもなく、1989年に連載が始まったあの原作マンガに立ち返るというアプローチが放送前からめっちゃ話題になりました。
舞台は2029年。「人形使い」をめぐる物語を軸にしながら、原作マンガが持っていたコミカルな空気というか、思考戦車のフチコマがわちゃわちゃしている感じまでちゃんと拾ってくれているんです。少佐の可愛いシーンが盛りだくさんだぞ。それだけで価値があるだろいい加減にしろ。
キャスト陣も素晴らしい芝居でした。長年、草薙素子を演じてこられた田中敦子さんが2024年に亡くなられて、素子はどうなるのか。大塚明夫さん演じる完璧なバトーはどうなるのか、など。初回放送前は不安視するコメントなども目立ちましたが、今回は素子を坂本真綾さん、バトーを安元洋貴さんが演じており、終わってみれば新生公安9課はちゃんと受け入れられていたと思います。フチコマ超可愛いし。
ネットの感想を見ていても、やっぱり話題の中心は押井守監督の1995年の映画版との比較です。あの映画が「重厚で哲学的な攻殻」の決定版だとしたら、今回は原作マンガが持っていた情報量とコミカルさを、現代のアニメーションで再解釈する方向。「原作の絵が動いている」というセル画風のルックへの感動の声があがる一方で、押井版や『S.A.C.』の空気を期待した人からは「思っていたのと違う」という戸惑いの声も出ていて、良くも悪くも賛否が割れているのかなー。
でも、アニメ作品ってのはこの賛否込みで大正解だと思っていましてね。新しく攻殻の世界に触れてくれる人は確実に増えていますからね。説明を最小限にした難解さまで含めて「これぞ攻殻らしい」と評価する声もあったし、押井版で攻殻に入った人こそ、あの「人形使い」がこの新解釈でどう描かれていくのかを見届けてほしいですね。
歴史ある作品の新作という重圧を真正面から受け止めた、堂々たる一本だと思います。
【大関&横綱編につづく!】
【プロフィール】
田口 尚平(たぐち しょうへい)
2015年にテレビ東京にアナウンサーとして入社後、スポーツ中継やバラエティ番組を担当。2020年にテレビ東京を退職後、早稲田大学院でMBAを取得し「オタクを極める」という目標を掲げて「Gamchew」を創業。ゲーム実況をはじめ、エンタメ領域の仕事を続けながら、企業のビジネス支援活動なども行っている。元TBSアナウンサー・宇内梨沙さんとのポッドキャスト番組『うない、たぐちの「オタクというには限界です。」』も好評放送中。
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