最期に守ったものは?キュラソーに宮野明美も…『名探偵コナン』黒ずくめの組織を捨てた「裏切り者たちの美学」の画像
劇場版『名探偵コナン 純黒の悪夢』© 2016 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会 © Being Inc. All Rights Reserved.

 青山剛昌氏の人気漫画『名探偵コナン』。本作において、主人公・江戸川コナンの前に立ちはだかる最大の敵といえば「黒ずくめの組織」だろう。謎に包まれたこの巨大組織の構成員として、数多くのキャラクターが登場してきた。

 だがその一方で、組織に背を向けた「裏切り者」たちも存在する。彼らはなぜ、危険を承知で組織を裏切る道を選んだのか。そして、その選択の先にはどのような結末が待っていたのだろうか。

 今回は、黒ずくめの組織に逆らった3人の人物に注目。それぞれが組織を裏切るに至った経緯と、その壮絶な最期を振り返りながら、彼らの生き様を追っていく。

 

※本記事には各作品の核心的な内容を含みます。

 

■ジンへの復讐を胸にコナンを生かしたアイリッシュ

 劇場版第13作『名探偵コナン 漆黒の追跡者』に登場したアイリッシュは、まさに「敵に回したくない男」だった。

 彼は松本清長管理官に変装して警察内部に潜入し、コナンの正体が工藤新一であることを早々と見抜く。終盤には白鳥任三郎や大和敢助といった警察官をまとめて眠らせ、さらにコナンを助けに来た毛利蘭との格闘戦にも勝利するなど、知力と戦闘力を兼ね備えた強敵であった。

 ところが、そんなアイリッシュは組織に絶対の忠誠を誓っていたわけではなかった。彼は、父親のように慕っていた組織の幹部・ピスコをジンに殺された過去を持ち、ジンに対して強い恨みを抱いていた。そのため、コナンの正体を突き止めると、その身柄をボスに差し出すことでジンを失脚させようと画策する。

 だが、その計画が実を結ぶことはなかった。警察に囲まれたアイリッシュを、ジンは無情にも切り捨て、キャンティに狙撃を命じるのである。胸を撃ち貫かれ、瀕死の状態となったアイリッシュ。その傍らで、キャンティの銃口は側にいたコナンをも捉えていた。

 次の瞬間、アイリッシュは意外な行動に出る。とっさにコナンの頭を腕で押さえ、銃弾を回避させると、その巨体でコナンに覆いかぶさり、自らが盾となって銃弾を受け止めたのだ。そして「工藤新一、いつまでも追い続けるがいい」と言い残して息絶える。

 この「いつまでも」という言葉には、黒ずくめの組織という強大な敵との戦いが、決して容易ではないという現実が込められている。

 だがそれでも、工藤新一ならば組織を追い続けていくことができるはずだ。そして、その先でジンを追い詰めてくれれば、それは自らが果たせなかった復讐を遂げることになる。アイリッシュは最期に、そんな思いと望みを託したのだろう。

■組織より「今の自分」を選んだキュラソー

 劇場版第20作『名探偵コナン 純黒の悪夢』のキュラソーもまた、黒ずくめの組織に背を向けた1人だ。

 組織のNo.2であるラムの側近として任務をこなしていた彼女は、ある出来事をきっかけに記憶を失い、その中で少年探偵団と出会う。吉田歩美、小嶋元太、円谷光彦ら子どもたちと過ごすなかで、彼女の心にはこれまで感じたことのない温かい感情が芽生え始めていた。

 やがて記憶を取り戻したキュラソーは、一度は組織に戻ろうとする。だが、少年探偵団と過ごした時間を思い返し、「今の自分のほうが気分がいい」と、組織から逃亡する道を選択した。

 しかし、キュラソーが組織を裏切ったことで、少年探偵団にも危機が及ぶ。子どもたちの乗る観覧車をジンたちのオスプレイが襲撃するなか、キュラソーは迷わず自らを囮にして、銃撃を引きつけた。組織に戻らないと決めた彼女にとって、少年探偵団を守ることは、過去の自分と決別し、「今の自分」として生きるための選択だった。

 だが、ジンたちは執拗に攻撃し、ついに観覧車そのものを脱輪させる。制御を失った巨大な車輪が転がり始め、ゴンドラに取り残された子どもたちに再び危機が迫った。

 それでもキュラソーは諦めなかった。腹部に鉄骨が突き刺さる致命傷を負いながらも、建設中のエリアにあったクレーン車に乗り込む。そして、ゴンドラに残された少年探偵団の姿を見つめると、重機を暴走する巨大な車輪へ向けて走らせ、真正面から激突。彼女のこの捨て身の一撃によって、暴走していた観覧車はついに動きを止めた。

 黒ずくめの組織の幹部だったキュラソーが最期に選んだのは、組織ではなく、少年探偵団という、小さな命を守ることだった。記憶を失っていた間に過ごしたわずかな時間こそが、彼女にとって何よりもかけがえのないものになっていたのである。

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