尾田栄一郎氏の描く大人気漫画『ONE PIECE(ワンピース)』(集英社)には、世界の頂点に君臨する血族「天竜人」が登場する。その中でも、読者のあいだで「最凶最悪」の存在と語られているのが「チャルロス聖」である。
傲慢な言動と、人を人とも思わぬ非道な振る舞いを繰り返して、読者の憎悪を一身に集めてきた男であり、天竜人の横暴さを知らしめた人物でもある。
本人はまったく強くないものの、天竜人という立場を利用して好き勝手な行動をしてきたチャルロス聖だが、彼の登場シーンを丁寧に追うと、単なる「無能なお坊ちゃま」とは言い切れない、底の知れなさも見えてくる。
そこで今回はチャルロス聖の不気味さが感じられた3つの場面を振り返り、彼のポテンシャルについて掘り下げていこう。
※本記事には作品の内容を含みます。
■殺気に怯まず、銃撃をかわされたことを一瞬で察知!?
まず注目したいのは、シャボンディ諸島編にてロロノア・ゾロに向けてチャルロス聖が銃を発砲した場面である。チャルロスは奴隷を撃ち殺すことを娯楽のように楽しんでおり、銃は彼にとって日常的な道具だ。ゾロを銃撃した場面も、ふだんの「遊び」の延長にすぎなかったのだろう。
ところが、事態は予想外の方向に動く。突然放たれた弾丸をかわしたゾロは、そのままチャルロスに斬りかかろうとしたのである。天竜人たるチャルロスに歯向かうことは、その背後にいる海軍を含めた世界政府を敵に回すに等しく、彼を傷つければ海軍本部大将が派遣される。
その事実を知らないゾロは、チャルロスの体を斬り裂こうとするが、ゾロと同じく最悪の世代の1人であるジュエリー・ボニーが身を挺してゾロの攻撃を制止したのだった。
チャルロスは、刀を構えたゾロの殺気に一瞬目を見開いたが、それでも斬られかけた恐怖に取り乱す様子は見せなかった。注目すべきは、このときのチャルロスの関心が、「自分が斬られそうになったこと」ではなく「なぜ弾丸を避けられたのか」という点に向いていたことだ。
ボニーが、チャルロスの銃撃が当たってゾロが死んだと思わせる迫真の演技を見せたため、うやむやになったが、「当たってたかえ……?」「一瞬避けられた様に感じたが」と、まるでゾロの素早い動きが見えていたかのような反応だった。
戦闘力皆無と思われたチャルロスが、ゾロの殺気にさらされながら相手の動きを冷静に見ていたかのようにも思えたシーンだ。あまり認めたくはないが、単に無能で甘やかされて育った子どもっぽい人物とは思えない一幕である。
もちろん、海軍大将すら動かせる絶対的な権力を持つ存在のために「自分が殺されるはずがない」という慢心が表れただけかもしれない。
それでもゾロの殺気をまともに浴び、斬られそうになっても、まったく動じないタフな精神性を秘めている可能性もゼロではない。わずかなシーンだったが、チャルロス聖が見た目通りの無能なだけの人物ではない可能性を示唆した描写と受け取ることもできるだろう。
■ルフィのガチ殴りを食らっても死なない驚異のタフさ
続いてチャルロスの異様さを印象づけたシーンが、シャボンディ諸島編で描かれた「ヒューマンオークション」での一幕である。このとき人魚の奴隷を落札しようとしたチャルロスは、そこに会場にいた魚人族のハチを銃で撃った。その直後、怒りに震えるルフィは、チャルロスの顔面に渾身の拳を叩き込んだのである。
当時は新世界に入る前とはいえ、ルフィは数々の猛者を倒してきた海賊の猛者である。その彼が真剣に怒って繰り出した本気の鉄拳は、並の人間であれば顔面が潰れてもおかしくないほどの威力だった。
実際、これを食らったチャルロスの顔面には拳の跡が残り、歯は欠け、鼻血を流しながら大きく吹っ飛んでいる。
しかし、世界会議編で再登場を果たしたチャルロスは平然としていた。あれだけのパンチを食らいながら後遺症もなく、今度は人魚族のしらほし姫をさらおうとする。完治までどれだけの期間を要したのかは不明だが、ルフィの本気の一撃を受けながら跡も残らず、まったく懲りていないあたり、メンタルも生命力も相当タフであると言わざるを得ない。
しかもチャルロス聖は、特別鍛えている様子もない。海兵のように訓練を積んだわけでも、悪魔の実の能力者というわけでもなさそうだ。
ギャグ要員のキャラクターだから強烈な攻撃もこたえないという側面もあるかもしれないが、それにしても不気味なほど肉体の頑丈さである。それは天竜人ならではの特性なのか、それともチャルロス聖が特別な存在であることを示唆しているのだろうか。


