■桓騎軍から飛信隊へ…異色の経歴を持つ那貴

 最後は、飛信隊のなかでも異色の経歴を持つ那貴(なき)を紹介したい。彼はもともと、元野盗の集団で構成された桓騎軍に所属する千人将であり、高い隠密能力と冷静な判断力を兼ね備えた、頭の切れる男だ。

 その那貴が、飛信隊に加わるきっかけとなったのが「黒羊丘の戦い」だった。尾平との“交換留職”というかたちで飛信隊に派遣された那貴は、信たちとともに戦場を駆け抜ける。この戦いで信が敵将・慶舎に迫る場面で、那貴一家が絶妙なタイミングで奇襲を仕掛けて追撃を援護した。状況を冷静に見極め、勝機を逃さず動く。那貴の有能さが光った場面である。

 そして戦いを終えた後、那貴は桓騎軍を抜けて、飛信隊への完全移籍を申し出た。荒くれ者ぞろいの桓騎軍において、それは桓騎への裏切りと見なされかねない大きな決断だった。それほどまでに、那貴は飛信隊という組織と、信という将の器に惚れ込んだのだろう。

 こうして飛信隊の一員となった那貴は、持ち前の隠密能力と冷静な判断力を生かし、戦場で信たちを支えていく。しかし、飛信隊に居場所を移したからといって、かつて苦楽をともにした桓騎一家との絆が消えたわけではない。

 「肥下の戦い」で桓騎軍が趙軍総大将・李牧の包囲網に追い詰められると、那貴は再び大きな決断を下す。「やっぱ 戻るわ 俺 お頭のとこに」。そう告げ、彼は飛信隊を離れて桓騎のもとへ向かった。生きて帰れぬと覚悟しての選択だったのだろう。そして那貴は、かつての仲間たちと運命をともにするのである。

 那貴にとって飛信隊は「仲間」であり、桓騎軍は「家族」であった。彼が信に惚れ込んでいたのは間違いないが、同時に、桓騎一家もまた彼にとって決して切り離せない大切な存在だったのだ。

 桓騎軍から飛信隊に移り、最後まで自分の信念を貫き通して行動した那貴。そんな彼もまた、信の成長を支えた、飛信隊に欠かせない仲間の1人だった。

 

 今回紹介した3人のほかにも、朱海平原で龐煖に討たれた古参の去亥(きょがい)や、宜安で命を落とした岳雷(がくらい)など、飛信隊には志半ばで散っていった仲間たちがいる。

 彼らが信じ、命がけで支えてきた信の夢。その歩みは、決して信1人の力だけで成し遂げられるものではない。多くの仲間たちがつないできた思いと命こそが、信を「天下の大将軍」へと押し上げる原動力になっているのである。

 そんな仲間たちの思いを背負い、前へと進み続ける信と飛信隊。これから彼らがどのような戦いを繰り広げ、どのような未来を切り拓いていくのか。激闘が続く『キングダム』の今後の展開から、ますます目が離せない。

 

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