■「華が散る=卍解終了」じゃなかった!? 日番谷冬獅郎の「氷輪丸」

 「3つの氷の華がすべて散ったら、卍解は終わり」。「大紅蓮氷輪丸(だいぐれんひょうりんまる)」の氷の華の描写を見た読者の多くが、そう受け取ったのではないだろうか。

 十番隊隊長・日番谷冬獅郎の斬魄刀「氷輪丸」は、「大紅蓮氷輪丸」に卍解すると、背後に3つの氷の華のような結晶が現れ、戦闘中にひとつずつ散っていく。まるで卍解の力が少しずつ失われていくかのような描写だった。しかし最終章「千年血戦篇」で、これがミスリードであったことが判明する。

 星十字騎士団のジェラルド・ヴァルキリーとの激戦の最中、ついにすべての華が散ってしまう。ところが、ここで大紅蓮氷輪丸の本当の仕組みが明らかになる。

 実は、日番谷の卍解はまだ未完成だった。3つの華がすべて散ることでようやく完成し、完全な「大紅蓮氷輪丸」の力を発揮できるようになったのだ。つまり3つの華は卍解のタイムリミットではなく、大紅蓮氷輪丸が完成するまでの準備時間を示していたのである。

 さらに、卍解の完成と同時に、日番谷自身も大人の姿へと急成長を遂げた。その能力は、それまでの“氷を操る”というレベルを遥かに上回るものだった。

 解放して繰り出したのは、「四界氷結(しかいひょうけつ)」。これは四歩のうちに踏んだ空間内の地水火風のすべてを凍結させるという能力で、戦いではジェラルドの巨大な体をも一瞬で氷漬けにした。

 卍解の“終わり”を示していると思われた「華が散る」という描写が、実は“完成”の合図だったとは、誰が想像できただろうか。作者・久保帯人氏によって仕掛けられたこの巧みなミスリードに、多くの読者が騙されてしまったのである。

 

 こうして振り返ると、『BLEACH』の斬魄刀には、単に強さを競うだけではなく、「そう来たか!」と意表を突くような仕掛けが数多く描かれていた。

 今回取り上げた以外にも、意外な能力を持つものは多い。たとえば、浦原喜助の「紅姫(べにひめ)」や更木剣八の「野晒(のざらし)」、さらには主人公・黒崎一護の「斬月(ざんげつ)」まで、それぞれに個性的な能力や仕掛けが用意されている。

 斬魄刀は、ただの武器ではない。持ち主の本質まで浮かび上がらせながら、読者の予想をいい意味で裏切り、真の姿を現す。そんな奥深い設定があるからこそ、『BLEACH』のバトルは唯一無二の面白さを誇っているのだろう。

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