■キャストが自ら始めた本人配信
宇内:『サイレントヒル f』の主人公・雛子役を演じていたのは俳優の加藤小夏さんでした。加藤さんのことを、この作品で知ったというファンの方も多かったのではないかと思います。特に、加藤さんが本作をプレイするゲーム実況は、とてつもない反響がありましたよね。ああいった、出演者を通じての広がりをどのようにご覧になっていましたか。
岡本:KONAMI側から仕掛けたことではなかったので、本人実況は本当にありがたかったです。やっぱり、今回のお仕事は大変だったと思うんですよね。加藤さんはゲームに参加されたことが初めてだったそうですし、モーションキャプチャーも難しかったと思うんです。マーカーがついた全身のスーツを着て、セットもないところでお芝居をしなくてはいけないですから。
宇内:メイキング映像を拝見しましたが、大変そうでした。
岡本:そのシーンを想像しながら演じなくてはいけないので、ごっこ遊びのような感覚もあったのではないかと思います。もし、加藤さんに良い思い出として記憶してもらえているなら、ありがたいですね。
宇内:キャストのみなさんの収録現場で印象的だったことはありますか?
岡本:雛子と雛子が向かい合うシーンがあるんですが、加藤さんが雛子をひとり分演じた後に、音声に合わせてもうひとり分を演じているんです。しかも、ふたりの雛子が語り合うシーンはかなりの長回しで、ちょっとでも間違うと最初からやり直し。このシーンは、加藤さんも苦労されていました。
宇内:あのシーンはワンカットで録っていたのですね。 自分とは何者かを問いかける重要なシーンですから、プレッシャーも大きかったでしょうね。
岡本:そうですね、大変だったと思います。
宇内:加藤さんの俳優としての魅力はどんなところにあると思いますか?
岡本:スタントマンがいらっしゃるので、 モーションキャプチャーで大変な動きがあるところは、「スタントの方に代わっていただいていいですよ」とお伝えしていたんですよ。でも、加藤さんはどうしても自分で演技したいとおっしゃって、アクションシーンも頑張ってくださった。ふらふらになりながらもやりきって、本当に根性がある方だなと感じましたね。
宇内:回避する動きも、バックステップも、鉄パイプを振るアクションも……ですよね?
岡本:そうですね、敵から逃げるシーンとか、すごく頑張ってくださいました。加藤さんの代表作のひとつになったのだとしたら嬉しいです。
宇内:加藤さんのゲーム実況配信も大人気でした。
岡本:加藤さんが大人気になったことも嬉しかったですが、さらに続いて他のキャストのみなさんも本人配信をしてくださいました。参加キャスト陣がとても仲が良くて、素敵なチームになっていたんだなと感無量でしたね。
宇内:雛子のご両親役のおふたり(父親・深水寛太役/真砂豪さん、母親・深水君江役/平岡珠美さん)は下呂市ふるさと観光大使に任命されましたね。
岡本:本人配信が予想以上の広がりを見せていて、新しいカルチャーを作ることができたのかなと思いました。なかなか海外の俳優さんだとこうはいかないんですよね。海外では契約やプロモーションの形が異なることも多く、収録後に作品へ継続的に関わっていただくのが難しいケースもあるんです。本人配信文化は世界的にも珍しいと思うので、ここから広がっていくといいですね。
宇内:ほかのゲームでも声優さんたちが本人配信を行うようになったりと、『サイレントヒル f』で加藤さんが始めたことが大きなムーブメントにつながっているような感覚があります。やはり、ご本人が配信すると、収録時の裏話が聞けたりするので、ゲーム実況としても見応えがあるものになりますよね。
岡本:「サイレントヒル」シリーズを伸ばしていくには、新しいお客様を獲得することが必要です。今回の『サイレントヒル f』は竜騎士07さんを起用したことで、竜騎士07さんのアニメやゲーム作品をお好きなファンが入ってきてくださいました。そのことに加え、加藤さんをはじめとしたキャスト陣が本人配信による広がりを作ってくださったおかげで、さらに多くの新しいお客様に興味を持っていただくことができた。本当にありがたかったですね。
【第4回につづく】
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【プロフィール】
宇内梨沙(うないりさ)
ポップカルチャーを心から愛する元アナウンサー。2015年、TBSテレビに入社。アナウンサーとして多数の番組を担当する一方、ラジオやYouTubeなどでゲーム偏愛を披露。2025年にTBSを退社し、現在は『Twitch』でゲーム配信者として活動中。


