超一流のスナイパー・ゴルゴ13の活躍を描く、さいとう・たかをさんのハードボイルド劇画『ゴルゴ13』。主人公のゴルゴ(デューク東郷)は不可能を可能にする狙撃で、あらゆる仕事をこなしてきたプロ中のプロ。それゆえに依頼料もまた破格の高値である。
一度の狙撃で数千万円を稼ぐことは当たり前で、作中では2兆円の資産を持っていることが明かされたほどだ(コミックス第108巻収録「潮流激る南沙ーG資金異聞ー」より)。
しかし、ゴルゴが金の亡者かといえば、決してそうではない。長い連載の中では、目を疑うような安い報酬で依頼を受けたケースもあり、そんな仕事でも彼は一切手を抜かなかった。金額では計れない、ゴルゴが依頼を引き受ける際の哲学とは、一体どのようなものなのだろうか。
そこで今回は、ゴルゴが驚くほどの安値で依頼を引き受けた、印象的なエピソードを紹介しよう。
※本記事には作品の内容を含みます。
■少年の宝物を受け取って依頼を遂行「ザ・スーパースター」
まずは比較的初期のエピソード「ザ・スーパースター」から。この物語では、ゴルゴがとある少年と交流し、それをきっかけに“はした金”で依頼を引き受けている。
寂れたバーで依頼人を待っていたゴルゴは、地元の不良少年・ジムと出会う。不良のくせに臆病者で周囲から馬鹿にされていたジムは、その勢いで「ゴルゴを殺してやる!」と拳銃を片手にゴルゴを襲撃するが、あっさり失敗してしまう。
しかし、拳銃を向けられてもまったく動じないゴルゴに憧れを抱いたジムは態度を一変させ、今度は「子分にして!!」とつきまとうようになる。暗い裏社会に生きるゴルゴが、ジムにはスーパースターのように輝いて見えたのだった。
だが、ヘンリー・キッシンジャー国務長官暗殺計画を偶然耳にしたジムは、テロリストの陰謀に巻き込まれ、暗殺を阻止しようとした末に凶弾に倒れてしまう。そして彼は最後の力を振り絞り、ゴルゴにキッシンジャーを助けてくれと依頼した。
その際にジムが差し出したのは、家出のために持ち出したわずかなお金と、彼が大切にしていた宝物の金メダルだった。ふだんゴルゴが受け取る依頼料からすると、まさに“はした金”だが、ゴルゴは何も言わずに請け負い、暗殺を目論むテロリストを狙撃して物語は幕を閉じる。
なぜゴルゴは、少年が差し出した「宝物」で依頼を受けたのだろうか。命をかけて陰謀に立ち向かった少年の勇気に心動かされたのか、あるいは単なる気まぐれか……。
その理由が作中で語られることはなかったが、だからこそ、その寡黙な行動にゴルゴの男気が感じられた。
■ダイヤ屑で復讐を請け負った「ガリンペイロ」
次は、山賊にすべてを奪われた男の復讐を代行するエピソード「ガリンペイロ」だ。
アマゾンの密林で家族と慎ましく暮らしていたマリオは、ある日、山賊のような荒くれ者集団「ガリンペイロ」に村を襲われてしまう。さらわれた妻子を取り返そうとガリンペイロのアジトに向かうも、妻子はすでに無惨な死を遂げており、自身も返り討ちにあって瀕死の重傷を負う。まさに絶望的な状況だった。
それでも復讐を諦められないマリオは、偶然耳にした「世界一の殺し屋」のうわさを頼りにゴルゴ13に連絡し、ガリンペイロのせん滅を依頼する。彼が用意できたのは、爪の先ほどの大きさしかないダイヤモンド数粒のみ。凶暴な山賊を壊滅させるリスクと見合わない報酬だった。
ゴルゴも一度はこの依頼を断ろうとするが、血をはきながら懇願するマリオの執念に何かを感じたのか、最終的に依頼を受けた。しかも「みな殺し」のオーダーを完璧にやり遂げるため、偽装ハイジャックや高額な兵器の調達までおこなっており、その費用は日本円で億を優に超えていた。言うまでもなく、完全な大赤字だ。
それでもゴルゴは表情ひとつ変えずにガリンペイロを追い詰め、1人残らず壊滅させる。このエピソードでは、同情の余地がない悪党たちを、手りゅう弾やロケットランチャーで容赦なくなぎ倒していくゴルゴの姿も見どころだ。ぜひ、実際に読んでみてほしい。


