1975年に連載が始まった美内すずえ氏の不朽の名作『ガラスの仮面』。本作は天才的な演技力を持つ主人公・北島マヤと、宿命のライバル・姫川亜弓が、幻の演目『紅天女』の主役の座をめぐって争う物語だ。
作中でマヤは、さまざまな困難に直面しながら成長していくが、そんな彼女を陰で支え続けてきたのが「劇団つきかげ」の仲間たちである。彼女たちは、時には役を奪い合うライバルとしてぶつかりながらも、苦しいときには手を差し伸べ、マヤの類いまれな才能を間近で見守ってきた。
今回は、そんな「劇団つきかげ」メンバーである青木麗、沢渡美奈、水無月さやか、春日泰子を中心に、彼女たちの歩みを振り返ってみたい。
※本記事には作品の内容を含みます。
■ライバルでもあり大切な仲間…マヤを支えた「劇団つきかげメンバー」とは
「劇団つきかげ」とは、かつて『紅天女』を演じた伝説の女優・月影千草が、自らの後継者を育てるために立ち上げた劇団である。そこに集まったのが、青木麗、沢渡美奈、水無月さやか、春日泰子といった、演劇の道を志す若い女優たちだった。
そんな彼女らの前に現れたのが、当時演技経験がほとんどなかった北島マヤである。千草はマヤの中に眠る才能を早々に見抜くが、先に劇団で修業を積んできたメンバーからすれば面白くない。『若草物語』の配役をめぐっては、マヤが三女のベス役に抜擢されたことに悔しさをあらわにする仲間もいた。
しかし、マヤの演技を目の当たりにするにつれて、彼女たちの感情は嫉妬から尊敬へと変化していく。劇団が存続の危機に立たされても共に芝居を続け、ときにはマヤの演技に触発されて全員で彼女の練習をサポートすることもあった。当初はライバル的な関係であった「劇団一角獣」のメンバーとも協力し、劇団つきかげのメンバーは舞台に立ち続けたのである。
マヤにとって劇団つきかげのメンバーは、もはや家族のような存在だ。一時は誤解から関係が悪化することもあったが、母親を失い天涯孤独の身となったマヤを、彼女たちは「おかえり」と言って温かく迎え入れた。
大きな挫折を味わったマヤが再び舞台へ戻れた背景には、変わらずに自分を受け入れてくれる「劇団つきかげ」という居場所があったからに他ならない。
■公私にわたりずっとマヤを支える「青木麗」
「劇団つきかげ」のメンバーの中で、マヤにとって最も身近で頼れる姉のような存在が、青木麗(あおき れい)である。高身長で長髪、ボーイッシュな容姿の持ち主であり、多くの女性ファンを熱狂させている人物だ。
劇団つきかげが苦境に立たされてからは、麗とマヤは一緒に古いアパートで同居生活を始める。芝居のこととなると周りが見えなくなってしまうマヤを、生活面から支えてきたのも麗だった。
舞台 『忘れられた荒野』で狼少女ジェーンを演じることが決まると、役作りのために四つん這いの生活を始めるマヤ。その様子を見た麗は「正常な神経ではこの子とは暮らせん」と呆れつつも、食事の世話をするなど甲斐甲斐しく面倒を見ている。マヤにとって麗は最高の理解者であり、保護者のような存在なのだ。
しかし麗自身もまた、高い演技技術を持つ役者である。マヤが高校で一人芝居『通り雨』を演じるにあたり、日常生活の中でパントマイムの練習をしていたときのこと。
マグカップをテーブルに置こうとするマヤに対し、麗は「コップの置き方がおかしい」と即座に手を滑り込ませ、正しい位置を教える。その後も、ゆで卵やサラダを食べる演技について厳しくチェックし、マヤの表現力を陰で支えて鍛え上げた。
その後も麗は、マヤを精神面、生活面で支え続け、紅天女の稽古に入った現在も共同生活を送っている。ときにマヤと桜小路優のデートシーンを目撃して見守ったり、速水真澄を想って泣きはらしたマヤを叱咤するなど、麗はマヤのプライベートにも寄り添い、結果としてその演技を成立させる上で欠かせない人物となっている。


