史実において、人間の裏切りによって歴史が動いたとされる場面はいくつも存在する。アニメなどのエンタメ作品でも、それまでの仲間を裏切って敵陣営に寝返る展開は多く見られ、時には「闇堕ち」などと表現されることもある。
戦争をテーマに描かれた『ガンダム』シリーズでは、所属する組織を裏切り、これまでの味方陣営と敵対したキャラクターも多い。その裏切りの理由は、欲に目がくらんだり、猜疑心や嫉妬心に駆られたりと、ケースやシチュエーションによってさまざまだ。
そこで今回は、敵対する陣営に寝返った女性キャラクターに着目し、それぞれが裏切った気になる理由について、あらためて振り返ってみたい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■「人の生き方はそれぞれ…」女であることを自ら選び、敵陣営についた女性士官
アニメ『機動戦士Zガンダム』に登場した「レコア・ロンド」は、主人公のカミーユ・ビダンが所属する「エゥーゴ」を裏切り、敵対組織である「ティターンズ」へと参加した。
エゥーゴにいる頃のレコアは比較的穏やかな常識人で、カミーユやファも慕う頼もしい女性だった。それだけに、非道な行いで知られるティターンズ陣営に寝返ったことが理解できなかった視聴者もいたかもしれない。
大きな理由として考えられるのが、やはりクワトロ・バジーナとの関係だろう。劇中でレコアとクワトロは、男女の仲であるような描写もあったが、多忙を極めるクワトロとすれ違い、満たされない思いから失望する様子がうかがえた。
そんなレコアが内に秘めた孤独に気づき、言葉巧みに近づいたのが「パプテマス・シロッコ」である。彼はレコアを女性として扱い、優しい言葉をかける。そんなシロッコに依存することで、心の孤独を埋めようと考えたのかもしれない。
そして最終決戦でのレコアとエマ・シーンの戦いの中で、エマが「あなたは女でありすぎたわ」と告げると、レコアは「そうよ、私は女よ」「だから今ここにいる、あなたの敵になった」と返している。こうしたやりとりから、女性として見てもらえなかったクワトロではなく、シロッコを選んだことが、ティターンズについた理由のようにも聞こえた。
かつての仲間たちと敵対する道を選んだレコアだったが、その選択に確固たる信念があったわけではないのは言動の端々から伝わってくる。最終決戦においてエマと対峙した際も、可愛がっていたカツ・コバヤシが命を落としたことを知らされ、激しく動揺を見せていた。
ティターンズに寝返り、強い女性を装いながらも、アーガマ時代の仲間たちを本気で敵視することができずにいたレコア。己の弱さをエマに指摘されると、「人の生き方はそれぞれ。他人の干渉など…」と強気に反論。だが、結果を見ると流されるように中途半端な立ち位置になってしまった、不幸な女性だったのかもしれない。
またレコアは最期の瞬間、「エマ中尉、分かってよ。男たちは戦いばかりで女を道具に使うことしか思いつかない」「もしくは女を辱めることしか知らないのよ」と恨み節を残している。それは、ジャブローへの潜入任務時に捕虜として捕らえられた際、連邦兵に屈辱的な尋問を受けて心に傷を負ったことを指すのか、あるいはクワトロやシロッコの彼女に対する扱いのことを指していたのだろうか……。


