荒川弘さんの人気漫画『鋼の錬金術師』の代名詞といえば、物質を「理解・分解・再構築」することで別の形へと変える「錬金術」の存在だ。登場人物たちがそれぞれ異なる錬金術を駆使する戦いは、本作の大きな見どころの一つとなっている。
能力の種類やそれを用いた戦い方も実に多彩で、それぞれの錬金術師の強さは単純な火力だけでは決められない。発動速度や射程、錬成の規模、知識などを含めたとき、いったい誰が「最強」に近いのだろうか。
今回は国家資格の有無を問わず、ホムンクルスを除いた錬金術師の中から、作中屈指の実力を誇る4名を取り上げ、その強さについてあらためて考えてみたい。
※本記事には『鋼の錬金術師』の核心的な内容を含みます。
■国土規模の錬成すら覆した“生きた賢者の石”「ヴァン・ホーエンハイム」
まず挙げたいのが、エドワードとアルフォンスの父親であるヴァン・ホーエンハイム。錬金術の知識と技術は作中でも最高峰で、フラスコの中の小人から名前と知識を与えられた人物だ。
物語の根幹にかかわる古代国家クセルクセスが滅亡した際、ホーエンハイムの体内には、国民53万6329人分の魂が取り込まれた。それ以降、彼は老いることのない、生きた賢者の石に等しい存在となっている。
最終決戦では魂たちの力を使い、本作のラスボスである「お父様」の体を内側から破壊しようとするなど、賢者の石を単なる燃料としてではなく、内包する魂の意思まで力に変えてみせた。
さらに、「お父様」が国民の魂を奪うことを予測し、長い年月をかけて国土全体に対抗用の錬成陣を仕込んでいた。実際に国土錬成陣が発動し、アメストリス国民の魂が奪われた直後、ホーエンハイムの錬成陣によって魂は人々の体へと戻されている。
扱えるエネルギーの総量、数百年にわたって蓄えた知識、そして国土規模の錬成に対抗できる技術まで含めて考えれば、錬金術師としての総合力は頭一つ抜けた存在だろう。
■指先ひとつで放たれる業火…焔の錬金術師「ロイ・マスタング」
一対一の戦闘における勝負の速さなら、「焔の錬金術師」ロイ・マスタングが有力ではないだろうか。
ロイは錬成陣が描かれた発火布の手袋で火花を起こし、対象周辺の酸素濃度を操作することで爆炎を発生させる。指を鳴らすという小さな動作だけで術を発動でき、離れた相手を直接狙える点が大きな強みだ。
ホムンクルスのラストとの戦いでは、腹部を貫かれ、発火布の手袋まで破かれてしまったが、自ら傷口を焼いて出血を止めると、血で手の甲に錬成陣を描いて反撃。再生するラストを何度も焼き続け、核となる賢者の石を燃やし尽くした。
また、親友マース・ヒューズを殺したエンヴィーとの戦いでは、目や舌を焼き、再生するたびに焔を浴びせ続けるなど、一方的に蹂躙した。その能力は、ホムンクルス最強格のプライドから、現存する国家錬金術師の中で「最も厄介」と警戒されるほどであり、戦闘面における完成度は折り紙つきだ。
一方、点火に使う発火布が濡れると通常の方法では焔を発生させられず、指や手を封じられたり、術を使う前に急接近されたりすると不利になりやすい。それでも高いレベルの火力、命中精度、発動速度を兼ね備えたロイは、作中屈指の錬金術師といえるだろう。


