■母への思慕を秘めた「孤高の天才」

 長浜作品が人気を集めたのと同時期に、もう一人の忘れがたい美形悪役がいました。それが『惑星ロボ ダンガードA』(1977年)に登場するトニー・ハーケンです。

 本作は松本零士さんがイメージクリエイターを務め、アニメと並行して松本氏の漫画版も連載されたロボットアニメ。荒木伸吾氏&姫野美智氏のコンビによる美形キャラが印象的でした。そして、その第27話より登場したハーケンは、松本氏の漫画版には登場しないアニメオリジナルキャラクターです。

 選民思想を持つドップラー総統は「ドップラー軍団」を結成し、緑あふれる惑星プロメテへの移住を巡って、人類の移住計画を妨害します。ハーケンは、そのドップラーに育てられ、組織の精鋭「ハーケン特別攻撃隊」を任せられた青年将校です。

 彼の声を担当した山田俊司さん(現:キートン山田さん)の気品ある演技も相まって、圧倒的な美貌と高いプライドを持つ貴公子として異彩を放ちました。当初は冷酷非情で尊大な自信家として描かれ、白兵戦では華麗に鞭を使うなど「美形悪役」らしさを発揮します。

 そんな彼のイメージが一変したのが第45話。主人公側の組織「ジャスダム」に所属するヒロイン・霧野リサを捕虜にするも、彼女に亡き母の面影を重ねたハーケンは、わざと逃がしました。冷徹な仮面の裏に、亡き母への思慕を秘めていた彼は、実は誰よりも部下を思いやる人間味にあふれた人物であることが徐々に判明していきます。

 プロメテを目前にして副隊長のハンスを失ったことで、これ以上の犠牲を出さないため、ドップラーにジャスダムとの共存を訴えます。ところがドップラーは耳を貸さず、それどころかハーケンの部下全員を未完成の戦闘機に乗せて、ジャスダムへの自爆特攻を命じたのです。

 このドップラーの非道な行いに、ついに彼は組織に背きます。ハーケンは敵であるはずのジャスダムに通信で懇願し、特攻させられた部下たちを救出します。そして諸悪の根源である独裁者ドップラーを自らの手で討ち果たしたのです。

 すべてが終わった後、ハーケンは勝利した主人公たちに合流することはありませんでした。放射能が充満したドップラー軍団の超巨大母艦プラネスターに一人残ると、太陽に向かって突っ込んでいきます。

 部下を救い、大義を貫きながらも、どこまでも孤独であり続けた彼の最期はあまりにも切なく、当時のファンの心を激しく揺さぶりました。

■国民に愛され、死してなお物語に存在し続けた「不滅の貴公子」

 昭和ロボットアニメの美形悪役を語る上で、絶対に外せないのが『機動戦士ガンダム』(1979年)のガルマ・ザビです。ジオン公国を牛耳るザビ家の末弟であり、地球方面軍総司令官を務めました。

 ギレンやドズル、キシリアといった強面な容姿の兄姉たちの中で、彼だけが気品と甘さを感じるずば抜けた美形であることは、その特異なキャラクター性を何倍にも際立たせました。

 多くの女性ファンの心をつかんだガルマですが、驚くべきは彼が生きて登場したのは物語のわずか数話に過ぎないという点です。第5話の後半で顔を出し、第10話で退場するまでのわずか6話の出番に過ぎません。

 しかし「ガルマ出撃す」「ガルマ散る」と二度もサブタイトルに登場し、シャアの謀略によって壮絶な死を遂げた後、物語の中での彼の存在感はむしろ増していきました。

 第11話では、恋人イセリナの命をかけた復讐劇が描かれます。さらに国葬のシーンでは、「我々は、一人の英雄を失った…」から始まるガルマを追悼するギレンの演説が話題を呼び、彼の国民的人気が巧みに政治利用されたのです。

 そして最終回で、ザビ家への復讐を果たすシャアが、キシリアを葬る際に「ガルマ、私の手向けだ」と告げる場面は、名シーンとして知られています。

 戦争を描いた作品だけに、ガルマのことを悪役と表現するのは少し抵抗がありますが、主人公と敵対する陣営にいた忘れられないキャラクターということで、今回は紹介させていただきました。


 悪役でありながら、逃れられない運命に翻弄された彼らに訪れた悲劇は、理不尽なものばかりでした。さまざまな理由で主人公と敵対した彼らが、真実に気づきながらも破滅からは逃れられない展開に、儚さや切なさを感じた視聴者も多いことでしょう。

 単なる勧善懲悪のアニメにはない悲劇的なドラマが、物語の奥深さを演出しました。そして訪れた深い喪失感が、ファンの胸に彼らの存在を永遠に刻み込んだのです。

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