任天堂から発売された人気RPG『MOTHER』シリーズ。中でも最高傑作との呼び声が高いのが、シリーズ2作目に当たる『MOTHER2 ギーグの逆襲』である。この『MOTHER2』は、今から32年前の1994年8月27日、スーパーファミコン用ソフトとして発売された。
木村拓哉さんと幼稚園児たちが「MOTHER2~」という謎のフレーズを歌う当時のCMが話題を呼び、ゲームのプロデューサーを務めたコピーライター・糸井重里さんによる「大人も子供もおねーさんも」というキャッチコピーを覚えている人も少なくないのではないだろうか。
まさにリアルタイム世代である筆者にとって、スーファミのRPGの中でも特に画期的な内容が印象に残っている名作だ。そんな『MOTHER2』の、今考えても「凄い」と思える斬新な部分をあらためて振り返ってみたい。
※本記事には、各作品の核心部分の内容も含みます。
■絶妙なリアリティを追求する、新しい戦闘システム
『MOTHER2』はコマンド選択式のRPGである。ファミコンで発売された前作『MOTHER』は独自性はあれども、やはり『ドラゴンクエスト』の影響を色濃く受けている印象もあった。しかし『MOTHER2』では、前作の雰囲気は踏襲しているものの、他に類を見ない画期的な戦闘システムが導入されていた。
それを象徴するのが、ドラムロール式のHPゲージだ。通常のRPGであれば、100ダメージを受けると、HPの数値は一気に100減少する。だが『MOTHER2』では、ダメージを受けた際にHPの数値が日めくりカレンダーのように徐々に減少していく様子が視覚的に表現されるのだ。
そのため致命的なダメージを受けたとしても、実際にHPの数値が0に到達する前に戦闘を終わらせたり、HPを回復させたりすると、戦闘不能が回避できるという実に斬新な仕組みだった。
この仕様もあってか、本作では序盤から致命的なダメージを受ける攻撃を繰り出してくる敵も多く、このドラムロール式HPゲージの特徴が遺憾なく発揮された。
また、戦闘に突入する流れも特徴的だ。前作のようなランダムエンカウント方式ではなく、フィールドに敵の姿が見えているシンボルエンカウント方式が採用されており、これもリアリティがあった。それもスーファミ時代には珍しく、シンボルの種類が非常に豊富で、戦う前から「あの敵だ!」と視認できるようになっている。
今も忘れられないのが、地底世界を冒険した時に主人公の何倍も大きい恐竜などのシンボルが闊歩していたことだ。戦う前から巨大な敵の恐ろしさがよく分かり、初プレイ時は恐竜のシンボルから逃げ回っていたことを思い出す。
さらにリアルだったのが、主人公たちが強くなると敵シンボルがおそれをなして逃げる様子が確認できたことだ。それまでのRPGでは、戦闘に入ってから実力差を感じて逃げ出す敵はいたが、戦闘前から警戒されている様子が伝わってくるのは、他のRPGには見られない画期的な要素だった。
■糸井節あふれる独特のセリフと小ネタの数々
本作のシナリオは、コピーライターの糸井重里さんが手がけているが、特に印象深いのが登場人物のセリフ回しだ。主人公たちだけでなく、町の人の何気ないセリフにも独特の糸井節が感じられた。
たとえば、「そんなつめたいこというと こころがはりさけそうなことをいうぞ!」といったウイットに富んだセリフ回しは味わい深い。
他にも、RPGでは定番の「はい」か「いいえ」を選択させる場面で、「アルプスのしょうじょ◯◯ジ ◯◯のところになにがくる?」といった小ネタを挟んでくるのが面白い。
ストーリーの本筋とは関係ないモブキャラにも、印象に残る発言をするキャラが多い。単なる町の住人にもそれぞれ個性があり、ただ情報をくれるだけの存在ではなく、その世界に生きているのだと実感させられる場面が何度もあったのである。
そして『MOTHER2』の中で、もっとも印象深いキャラクターといえば「どせいさん」だろう。サターンバレーに住む謎の生命体のどせいさんは、大きな鼻が特徴的な一頭身のキャラ。彼らのしゃべるセリフだけ、なぜか独特のフォントで表現されている。
まだキャラクターボイスがなかったスーファミ時代に、セリフのフォントを変えることでキャラの個性を表現するというセンスに脱帽させられた。


