青山剛昌氏による『名探偵コナン』(小学館)は、2026年でアニメ放送30周年を迎えた国民的作品だ。劇場版は毎年の恒例行事になっており、今年公開された『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』も大きな話題となった。
作中では、数え切れないほどの殺人事件が起こっており、登場した犯人の事情もさまざま。カッとなって衝動的に罪を犯した者もいれば、壮絶な復讐を果たした者、とんでもない逆恨みで命を奪った者もいる……。
とくに劇場版は、大スクリーンに映えるスケールの大きな事件が描かれるだけでなく、動機がぶっ飛んでいた犯人が多いことでも知られる。今回はその中から、視聴者を唖然とさせるほど“動機がヤバすぎた”犯人たちを紹介していこう。
※本記事には各作品の核心的な内容を含みます。
■愛ゆえの思い込みから犯行に走る
まずは2015年に公開された第19作『業火の向日葵』で、公開当時から観客を騒然とさせた、犯人の動機を振り返りたい。
本作では、焼失したとされていたゴッホの名画「ひまわり」の2枚目が見つかり、これを含めた全7枚の「ひまわり」を並べて展示する企画展が開催されることになる。そんな中、絵画鑑定士の宮台なつみは、「ひまわり」を空輸する飛行機に爆弾を仕掛けたり、会場のレイクロック美術館で火災を起こしたりと、あらゆる手段を使って展覧会の阻止を目論んだ。
なぜ彼女はそこまでしたのか。その動機は、“偽物の「ひまわり」を本物と並べて飾りたくなかった”というものである。
宮台は、7枚のうち2枚目と5枚目の「ひまわり」を贋作だと信じており、その2枚が他の本物と並べられることが我慢ならなかったのである。「ひまわり」のことを誰よりも研究してきたと自負しており、作品に対する愛と自分の鑑定眼に絶対的な自信があったからこそ、激しい怒りを覚えたのだ。
そして、偽物を展示することは作品を汚す行為だという気持ちに突き動かされ、場合によっては殺人も辞さない覚悟で、無関係の人間をも巻き込む大規模な計画を実行した。
かなり自己中心的な犯行であるうえに、宮台が偽物と主張していた「ひまわり」はまぎれもない本物。このオチには思わず脱力してしまったが、強すぎる愛情や執着は、時に人間を歪めてしまうということだろう。
■歪んだ美意識の暴走
続いては、1997年に公開された第1作『時計じかけの摩天楼』の犯行動機に触れておきたい。この作品は、次々と発生する連続爆破事件の阻止に奔走しつつ、裏で手を引く犯人を追うストーリーとなっている。犯人から犯行予告が出され、決められた時間内に爆弾を探して解除する展開は緊迫感があった。
『名探偵コナン』の劇場版では爆破シーンがお決まりの要素だが、第1作目の本作でもいくつもの建造物がド派手に破壊されていく。しかも最後のターゲットにされた建造物は、高くそびえたつ米花シティビル。もし爆発を阻止できなければ、どれほどの被害者が出たのか想像するだけでゾッとしてしまう。
そんな恐るべき破壊活動を繰り返した犯人の正体は、世界的に有名な建築家・森谷帝二。金も地位も何もかもを手にしているはずの男が凶行に及んだ理由は、常人からすると信じがたいものだった。
それは、“過去に依頼されて作った建築物がシンメトリー(左右対称)ではなかったから”。実は森谷はシンメトリーに強いこだわりを持っており、自身の名前を左右対称にするため「貞治」から「帝二」に改名したほどである。
だが、建築家はいつでも好きなように建物を作れるわけではない。予算やクライアントの要望など、さまざまな事情により、特に若い頃は自分のこだわりを曲げる必要もあった。森谷はそうした過去の作品を認めたくない気持ちをこじらせた結果、それらを破壊し尽くそうとしたのだ。
自分のこだわりと美意識のためだけに、平気で多くの人間を危険にさらすとは、つくづく恐ろしい話である。


