秋本治氏が描く国民的ギャグ漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(集英社)、通称『こち亀』。その主人公・両津勘吉はテレビゲームが大好きだ。連載が始まった当初は、「いい歳をした大人がゲームなんて」とよく大原部長に怒られていたが、昨今では大人がゲームを楽しむのもあたりまえになっており、時代が両さんに追いついた感もある。
作中では、そんなディープな大人ゲーマーの両さんが、架空のオリジナルゲームで遊ぶエピソードが多く描かれている。いずれも奇想天外でハチャメチャな内容のゲームに対し、両さんが鋭いツッコミを入れつつも、持ち前のバイタリティでクリアしていく名作回ばかりだ。そして中には、現代のゲームシステムに通じる先見の明を感じられるものもあるから面白い。
そこで今回は、時代を先取りしていたといっても過言ではない、『こち亀』のオリジナルゲーム回を振り返ってみたい。
※本記事には作品の内容を含みます。
■「豪華景品」を得るためにRPGやレースに挑戦!?「R・Pパチンコ!?の巻」
生粋のギャンブル好きである両さんは、特にパチンコには目がない。コミックス第97巻収録の「R・P(ロールプレイング)パチンコ!?の巻」では、そんなパチンコをテーマにしたテレビゲームが登場した。
両さんが購入したゲームソフト「SUPER超(10乗)リアルパチンコ」は、1本3万円もする高級ゲームで、その名の通りリアルなパチンコを体験できるのが特徴だ。
だが、両さんはそれだけではなく、「(ゲームで得た出玉を)本物の現金に換金できるんじゃないか」と推察する。結論からいうと、その両さんの推理は半分正解であり、とある条件を満たせば現実世界の自動車や純金といった豪華景品と交換できるというとんでもないゲームだった。
その「とある条件」が、これまた凄まじい。換金所を探すためにゲーム内のあちこちを探した両さんは、やがて秘密の建物にたどり着く。しかし、そこで彼を待っていたのは、ダンジョンで大量のモンスターを倒しまくるという王道RPGさながらの展開だったのだ。
パチンコゲームのはずが、突如としてRPGが始まり、さらにはカーレースをしたり、唐突に現れた四天王を相手にする格闘ゲームになったりと、ジャンルごちゃまぜのカオスな流れに突入する。
常人なら匙を投げそうな内容だが、お金に対する凄まじい執念を見せる両さんは、隠された換金所を見つけ出し、景品交換の権利を獲得したのである。
しかし、その後はゲームメーカー側が景品交換を拒否して逃げ出し、両さんが「早く景品よこせ!!」と怒鳴りこむという『こち亀』らしいオチを迎える。両さんの手にかかれば、ゲームでも現実でもお目当てのお宝を探し出すのは朝飯前なのである。
■現代なら許されない怪しいゲーム?「C・Gカタ屋!!の巻」
コミックス第99巻に収録された「C・Gカタ屋!!の巻」では、昭和時代に子どもたちの人気を集めた露天商「カタ屋」を題材にしたパソコンゲームが登場する。カタ屋とは、動物や漫画のキャラクターのカタ(粘土型)を使い、子どもたちが作った粘土細工の出来映えを店側が採点するという、懐かしい遊びだ。
ゲーム内でも、最初は普通にカタ屋遊びを楽しめるのだが、点数を集めた頃合いを見計らったかのようにカタ屋が行方不明になってしまう。本来であれば、貯めた点数を使って大きなカタに交換できるシステムのため、これでは点数の集め損だ。
だが、このゲームはここからが本番である。行方不明のカタ屋を探す両さん操る主人公の前に現れたのは、『機動戦士ガンダム』や『マジンガーZ』を彷彿とさせるロボットとのバトルや、『ドラゴンクエスト VI 幻の大地』のミレーユや『ファイナルファンタジーVll』のエアリス・ゲインズブールによく似たキャラが登場するRPGなど。明らかに名作ゲームを模倣したミニゲームに無理やり挑戦させられるのだ。
しまいには『マリオ』シリーズでおなじみのピーチ姫らしきキャラクターまで登場し、著作権の無法地帯と化していた。これにはさすがの両さんも「版権はどうなっているんだ!」とツッコんでいたのが面白い。
どうやら開発者もやりすぎを自覚していたようで、ゲームオーバーと同時にゲームそのものが自動的に破壊されるという証拠隠滅システムが搭載されていたことを付け加えておく……。


