■「なんでもあり」の戦いで本領発揮した本部以蔵

 『刃牙道』の中で現代に蘇った剣豪・宮本武蔵は、シリーズ中でもかなり異質な存在だ。乱世を生き、殺し合いが日常茶飯事だった武蔵にとって、現代のファイターは脅威に思えなかった。

 武蔵は、愚地独歩に渋川剛気、ガイア、烈海王といった、現代の名だたる猛者を相手に勝利をおさめ、太古の時代に恐竜と渡り合ってきたピクルすら戦意喪失させたほどである。その武蔵に唯一対抗できたのが範馬勇次郎だが、じゃまが入ったせいで決着はついていない。

 そんな中、武蔵に真剣勝負を挑んだのが本部流実戦柔術の使い手・本部以蔵である。本部は現代のファイターを「守護(まも)る」ために武蔵と戦うことを宣言したが、これまでの彼の実績を考えるとジョークにしか聞こえなかった。

 しかし、いざ試合が始まると予想外の展開になる。目潰しからの奇襲に始まり、煙幕や鎖分銅などの武器を用いた遠距離攻撃、手槍で攻撃して態勢が崩れたところにメリケンサックで殴りつけるなど、容赦ない攻撃を畳み掛ける。到底、格闘技と呼べるものではなかったが、本部は自分が持ちうるすべての攻撃を叩き込み、武蔵を追い詰めていった。

 その後、ついに武蔵が刀で反撃するも、鎖帷子を仕込んでいたおかげで致命傷には至らず。とはいえ武蔵の斬撃は圧倒的で次々と斬りつけられたが、本部は頭突きで武蔵を怯ませてから背後を取り、ボロボロの体で締め技を極めて、まさかの勝利をおさめた。

 過去に柳龍光との戦いでもその片鱗を見せていたが、「なんでもあり」の戦いであれば、本部はめっぽう強い。それが作中トップレベルのバケモノ・武蔵にまで通じることが分かったこの戦いは、本部の評価を大きく変える一戦となった。

 

 『刃牙』シリーズでは力や技が上回っている者が、必ずしも勝つとはかぎらない。時には執念や根性が、圧倒的な力量差を凌駕する展開もあり、意外な決着シーンは読者を興奮させた。試合展開や勝敗を予想するのが難しいのも、本シリーズの魅力の1つといえるだろう。

 

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刃牙道 (1) (少年チャンピオン・コミックス)
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