宇宙世紀の『ガンダム』シリーズの作品を見ていると「アナハイム・エレクトロニクス」という企業の名が目につく。
アナハイム・エレクトロニクス社はもともと地球・北米の家電メーカーだったが、政界、財界のさまざまな後ろ盾を得ながら、軍需産業として急成長。宇宙用の艦艇やモビルスーツなどの生産も行うようになる。その企業モットーは「スプーンから宇宙戦艦まで」であり、宇宙世紀の経済圏に圧倒的な影響力を持っていた。
グリプス戦役時はエゥーゴに出資し、モビルスーツなどの開発に携わりながら、その裏では敵対組織であるティターンズにも機体を提供。さらにアクシズとも交渉を持つなど、どの陣営ともつながりを持っていた。
そんなアナハイム・エレクトロニクス社は、ただ兵器を供給するだけではなく、時には敵対する組織同士の闘争を煽るような黒い裏取引も行っている。
そこで今回は「死の商人」などと揶揄される場面もある軍産複合企業「アナハイム・エレクトロニクス社」が行ってきた裏取引や横流しなど、闇を感じるシーンをあらためて振り返ってみたい。
※本記事には作品の核心部分の内容を含みます。
■アナハイム社に見え隠れする「黒い疑惑」
一年戦争の終結から3年後を描いたOVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』の中で、アナハイム・エレクトロニクス社は不穏な動きを見せていた。
『0083』の時代では、地球連邦軍が推進する「ガンダム開発計画」をアナハイムに委託。その計画に沿ってGPシリーズと呼ばれる4機のガンダムタイプが生まれることとなる。
これらのガンダムを中心に物語は展開され、やがてジオン公国軍残党によるデラーズ紛争が勃発。その最中、ガンダム開発計画の管理責任者だったジョン・コーウェン中将が失脚してしまう。
それにより、ガンダム開発計画自体の停止を察したアナハイム社は、ロールアウト目前だったガンダム試作4号機の納入停止を決定。しかし、アナハイム社の計画責任者であるオサリバン常務は、裏で元ジオン公国軍のシーマ・ガラハウと内通していた。
開発が凍結されたガンダム試作4号機の外装をジオン系の機体に偽装し、「ガーベラ・テトラ」としてシーマに譲渡したのである。
もともと連邦から委託された成果物であるガンダムタイプの機体を、偽装までして譲渡する行為は大問題なのは言うまでもない。結局オサリバン常務はデラーズ紛争後、不自然なかたちでの自死を遂げている。彼がシーマとどのような取引をし、どんな利益・利権を得ようとしていたのかは分からずじまいだった。
そして連邦もガンダム開発計画自体を抹消。オサリバンの死とともにアナハイム・エレクトロニクス社側のガンダム開発計画の責任者が起こした事件も闇に葬られ、連邦ではコーウェンにかわってティターンズが台頭することになった。
この件にどこまでアナハイム・エレクトロニクスが企業として関与したのかは分からないが、いずれにせよ闇の深さを感じる事件である。
■敵陣営にモビルスーツを無償提供!?
時は進み、アニメ『機動戦士Zガンダム』の舞台となった宇宙世紀0087年に「グリプス戦役」が勃発。アナハイム・エレクトロニクス社は、反地球連邦組織である「エゥーゴ」のスポンサーとなり、出資やモビルスーツの提供も行う。
だがその一方で、エゥーゴの敵対組織であるティターンズにもマラサイなどの機体を提供。書籍『週刊ガンダム・モビルスーツ・バイブル 83号』(デアゴスティーニ・ジャパン)によれば、もともとマラサイはエゥーゴへの提供を想定してアナハイムが開発した機体だったという。
しかしグリプス戦役の発端ともいわれる、エゥーゴによる「ガンダムMk-II強奪事件」への共謀を疑われたアナハイム社の上層部は責任を回避するため、ティターンズに機体を無償提供したとされている。
結果的にスポンサーであるはずのエゥーゴの敵に兵器を提供したことになり、どちらの陣営にもいい顔をしながら、両軍に兵器を売って利益を得るという、その後の企業体制を象徴するような出来事にも思えた。


