■各話の演出も話題だったドロドロ百合アニメ!第1位は『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』
第1位に挙げるのは『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』。最初から世界観が大好きで注目していたんですが、とにかく演出の間がマジでいい。本作はガチ百合アニメなので非常に湿度が高い。そこに割って入るお酒のちょっとした豆知識みたいなものもあって、見ながらお酒が飲みたくなる作品です。
簡単に物語を説明すると、主人公は秩父の大学に入学した上伊那ぼたんという大学1年生。現役入学なら入学時点では10代ですが、彼女は一浪して入学した4月生まれの20歳なので、お酒が飲めるという設定。浪人で得られることは多いわね。
ぼたんは学生寮で生活を始めるんですが、物語には彼女を含めて6人の女の子がいて、それぞれの思いが交錯していく……っていう。公式の言葉を借りるなら「酔っ払いいちゃいちゃガールズコメディ」です。脳が焼かれまくるし、毎回タワーを建立したくなる。
やっぱり、女の子が女の子を好きになる作品は綺麗ですね。健康になります。でも真正面から百合百合って感じでもなくて、もっとドロドロしてるというか、百合になる前の嫉妬がすごいんですよ。ぼたんが悪女すぎる(褒め言葉)。
主人公のぼたんは、寮長の砺波いぶき(となみ・いぶき)という先輩と最初に交流を持って、段々と友達以上の関係になり始めます。ただ、いぶきのさらに先輩に郡上かなでというアンニュイなお姉さんがいて、通称・ぐじょせんって呼ばれているんですが、この子がいぶきにがっつり片思いしているんですよ。切なすぎる。EDで脳が焼かれます。
実はぐじょせんといぶきは以前、一緒に旅行に行ったこともある関係。でもその時は、そんなに湿度の高い状況にはならなかったんですね。というのも、いぶき先輩はかなりの酒好きなんですが、お酒を飲むとしゃっくりが出ちゃうのがコンプレックスで、ぐじょせんの前ではお酒を飲まなかったんです。
ところが、ぼたんはいぶきのしゃっくりを気にせず受け止め、自分も炭酸でげっぷが出ることを打ち明ける。だから、いぶきはぼたんとなら一緒に飲めるようになり、「楽しいなー」ってなりながらどんどん距離が縮まっていくんですよ。勘弁してくれ、脳が焼かれる。
ぐじょせんからすると、こんなに悲しいことないじゃないですか。私のほうがずっと前から好きなのに、なんで私とは飲んでくれないの? みたいな。そういう感情の機微に焦点が当たっているのがとにかく良い。それ以外にも遊佐あかね、北杜やえかという別のキャラもいて、それぞれが相思相愛……。かと思えば、そこに張景嵐という台湾からの留学生が入ってきてかき乱したりするわけです。留学生も悪女なのかよ(褒め言葉)。
しかも毎回エンディングで、そのエピソードの後日談や過去の振り返りが流れるんですが、いぶきの脳みそにはぐじょせんと旅行に行った記憶がそんなに残っていなくて、ぼたんに上書きされちゃっている……みたいなエンディングもあるんですね。切なくて悲しくて、非常に良い作品です。
なお、制作しているのは、Soigne(ソワネ)というスタジオ。シネフォト部の活動を描いた『mono』が元請け第1作となったスタジオで、女の子を描くのがすごく上手なんです。それから通常、アニメ制作時は「総作画監督(総作監)」を据えることで作風を統一して、全体のクオリティを維持することも多いんですが、本作ではシリーズを通して総作画監督を置かず、各話に作画監督を立て、演出担当やアニメーターの個性を強く反映させるやり方。だから話数ごとに絵のテイストが全然違うんですよ。
それ自体は賛否両論だったんですけど、俺はもう逆にそっちまで楽しめちゃいました。ちゃんとクリエイターの色がわかるし、世界観もしっかり確立されていて素晴らしかったなと思います。
【プロフィール】
田口 尚平(たぐち しょうへい)
2015年にテレビ東京にアナウンサーとして入社後、スポーツ中継やバラエティ番組を担当。2020年にテレビ東京を退職後、早稲田大学院でMBAを取得し「オタクを極める」という目標を掲げて「Gamchew」を創業。ゲーム実況をはじめ、エンタメ領域の仕事を続けながら、企業のビジネス支援活動なども行っている。元TBSアナウンサー・宇内梨沙さんとのポッドキャスト番組『うない、たぐちの「オタクというには限界です。」』も好評放送中。
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