「人は見かけによらない」とはよく言ったもので、漫画やアニメの世界にも当てはまる格言だ。優しそうに現れた紳士が実は悪党だったり、臆病そうな子どもが勇気を出して人を助けたりと、そういったギャップは物語と私たちの心を盛り上げてくれる。
漫画、アニメともに大人気のファンタジー作品『葬送のフリーレン』(原作:山田鐘人氏、作画:アベツカサ氏)にも、「人は見かけによらない」を地で行くキャラクターがいる。
それが、「一級魔法使い試験編」で活躍したヴィアベルだ。人を射抜きそうな鋭い目つきと恐ろしい薄笑いを常に浮かべている魔法使いの男で、「悪そう」「不良みたい」といった印象を抱いた読者や視聴者も多いはず。
だが、実際の彼は不良どころか、本作でも指折りの頼れる男だった。今回は、その見た目とのギャップがいい意味で大きかったヴィアベルの魅力をあらためて紹介しよう。
※本記事には作品の内容を含みます。
■人殺しだが、人を殺す猶予は欲しい…人間らしい感情の持ち主
ヴィアベルは魔王軍の残党と戦ってきた北部魔法隊の隊長であり、必要とあらば殺人もいとわず、女性や子どもを殺した経験もあるという。その経歴だけを聞くと、まさに見た目通りの冷酷さを持った男という印象だ。
そんな彼のイメージがガラッと変わったのは、“隕鉄鳥(シュティレ)”を捕まえる第一次試験でのこと。ヴィアベルは、早々に隕鉄鳥を回収したフェルン、ユーベル、ラント組を、仲間とともに“殺すつもり”で強襲し、そのまま乱戦に突入する。
彼は最も危険とされるユーベルとの対決を選び、得意の「見た者を拘束する魔法(ソルガニール)」で彼女を封じ込める。あとは“殺すつもり”でユーべルを倒せばいいだけの状況だったが、ヴィアベルはあくまで隕鉄鳥を要求し、なかなか手を下そうとはしなかった。口では「お前(ユーベル)はここで殺しておくべきだな」と言っておきながらだ。
たしかにヴィアベルは多くの人間を手にかけてきたが、その覚悟を常に固めているわけではない。人を殺すまでの猶予を求め、不必要な殺しはしない……彼は、そんな人間らしい感情を持っている男なのだ。
その本音をユーベルに見抜かれても、ヴィアベルはいつものうすら笑いを浮かべ「必要な殺しは全部やってきたぜ」と語る。その姿からは、第一印象では感じられなかった人間くささがにじみ出ていた。
■口は悪いが情に厚い! 仲間を見捨てない兄貴肌
ユーベルにとどめを刺そうとしたヴィアベルだが、突如現れたフェルンに食い止められ、さらに仲間のエーレが殺されたと聞かされる。
これは後でフェルンのウソだと判明するのだが、ヴィアベルは戦意を喪失し、その場を去ってしまう。口では「パーティーメンバーが全員揃っていないと試験に合格できないから」と言うが、その顔からは笑みが消えていた。
その後、道端で倒れているエーレを見つけたヴィアベルは、悪態をつきながらも立ち上がれない彼女を魔法で運ぼうとする。だが、エーレからは「おんぶして」というまさかの要求が。それでもヴィアベルは、ものすごく嫌そうな顔をしながらも、要求に応じ彼女を背負ってあげるのである。
この後発見した3人目の仲間・シャルフも魔法で丁重に運んでおり、「クソ。マジでなんなんだよ…」とぼやきながらも、ヴィアベルは2人の仲間を見捨てなかった。彼が仲間想いで、頼られる兄貴肌だと判明するほほえましいシーンだ。
口ではひたすら文句と愚痴を繰り返していたが、その姿は愛嬌すら感じさせるほどである。


